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 (2)運動技能獲得におけるレディネスと臨界期の問題
  運動技能練習の際に、課題に対して幼児のからだの受け入れ態勢、準備状態ができているかどうかが問題である (レディネス)。従来の教育理論では、ゲゼルにならって、このレディネスが強調されていたが、そのことが行き過ぎて「待ち主義」 ともいえる方向に流れる面もあった。これに対して、効果がぐんと上がる最も適した時期(臨界期)を重視しいたずらに待ち過ぎ ないようにしょうという考え方が抬頭してきた。ところがこの臨界期重視の先走りが何でも早教育がよいとする方向に向かい つつあり、物議をかもしている。臨界期重視は有名なマグロウの実験に根拠をもっているが、その実験結果からいえば、泳ぎ、とび 込み、ローラースケートなどは幼児期の早期に練習することによって効果をあげているが、歩行は早くからトレーニングしても 効果はなく、三輪車は早く経験することによって上達しないばかりか、かえってその後の練習で妨害にさえなったということで ある。
  以上のことから、要するに、筋力など出力が主となる運動ではあまり早期から練習することは避けた方がよいし、神経支配 が主となる運動ではある程度早目に始めた方がよいということになるであろう。いずれにしても、適時が大切なのである。

3.運動の指導

 (1)カリキュラム
  幼児の体育指導においてもカリキュラムの編成は必要である。しかし対象である幼児の生活は流動的であり、予想外のこと が起こり得るので、弾力性のあるものにしておく必要がある。
  カリキュラムを編成する場合には、教材の選択ということも関係してくる。何歳の子どもに対してはどのような運動を指導 するのが適切かということを検討し、必要な教材を精選して適当に配当することを考えなければならない。これらについては、当 センターの調整力委員会で本年度中に試案が出される予定である。
  大まかに私見を述べれば次の通りである。
  年中組では固定的な遊具で十分に遊ぶとともに、基本的な個別動作にも積極的に取組み、年少組の場合よりも確実な動作の できることを狙うべきである。そして、その上に立って、ゲーム化できるものはどんどん進めて行けばよい。
  年長組では多くの固定的な遊具での遊びはそろそろ卒業し、ボールゲームを主とした活発な集団遊びに入るのがよい。 年長組の中心課題はゲームに置く。
  設定保育の中での運動あそびの時間は、2日に1回を最低の目途にし1回の時間は3歳で20分、4歳で30分、5歳で40分程度が適当 である。


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