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 (4)幼児の運動のトレーニング効果
 幼児がいろいろの運動をトレーニングした場合、その効果の現れ方は、行った運動の内容によって異なっている。例えば体力 の敏捷性が主要因子となっている反復横とびをトレーニングするのと、馬力が主要因子となっている立幅とびをトレーニング するのとでは、効果の現れ方にかなりの差が見られる。
 体力構成因子別に、各種の運動を幾つかの幼稚園で実際に毎日行って、1日1回、1ヵ月間継続したところ、次のような結果となった。
 ? 敏捷性や巧徴性など神経機能と強く結びついた運動種目では、幼児の各年齢においてトレーニング効果は非常に高かった。
 ? 筋力や馬力など出力機能と強く結びついた運動種目では、トレーニング効果は一応見られるとしても、上記の?ほど 著しくはなかった。
 ? 持久力のように呼吸循環機能と強く結びついた運動種目では、トレーニング効果の現われることは少なかった。
 ? 体力因子によって効果の程度に差は見られたが、いずれにせよトレーニングの効果は見られ、とくに年長組での伸びが注目 された。

(5)調整カテスト
 幼児の段階での体カテストとしては、幼児のからだの特徴から考えてとくに調整力のテストを重視すべきであろう。幼児に 対してテストを課する場合には種々の難点を伴なうものであるが、中でも幼児自身が本気でテストを受けているかどうかが 問題である。
 そのためには、幼児自身がテストの面白さに釣られて夢中になってやっている間に、いつの間にか能力がはかられていたと いうような興味にあふれたテストでなければ、幼児の本当の能力ははかれない。
 最近、財団法人体育科学センターでは、幾つかの大学の研究者に委託してプロジェクト研究を行い、かなり信頼性の高い調整 カテストを完成した。このテストはフィールドテストとラボラトリーテストに大別され、般的に利用されやすいフィールドテ ストは「とびこしくぐり」、「反復横とび」「ジグザク走」の3種目から成っている。これらはいずれも上記の幼児の興味を満 足させ得るものである。

2.体力・運動能力・運動技能

 (1)体力・運動能力・運動技能の意味
  体力には2つの意味が含まれている。1つは病原菌の侵襲や寒暑などから身を守るための力である防衛体力、いま1つは運動 や労働を有効に進めていくための力である行動体力である。
  一方、運動遂行に必要な身体上の多面的な能力の総体で、しかも運動に対する適応能力という観点に立って、運動能力とい うことばが使われている。運動能力は行動体力とほぼ同義であると解してよいであろう。
  運動技能は運動能力を下地とし、学習活動(練習)によって獲得された身体支配の成果である。これをいい換えると、技能は 学習(練習)によって獲得され、予習は運動能力に支えられるといえる。したがって、技能によっては、ある水準以上の運動能力が なければ使えない種類のものもある。
  幼児期からの多様な運動経験は、幼児の体力、運動能力、運動技能を有機的に結びつけるとともに、これらをあぎなえる縄の ようにして発達させていくものと考えられる。


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