4.「できるだけ」型と「ここまで」型の指示
体カテストの多くは、一般に、ある課題場面をもうけ、子どもに“できるだけたくさん……”型の指示を与えて運動成果をみ
るものが多い。ところが幼児期には、この“できるだけ……”型の指示で体力の上限値が得られるのは容易ではない。ギネフス
カヤらは、幼児に“できるだけたくさん跳んでごらんなさい”という指示と“この線までとんでごらんなさい”という2通りの
指示で、立幅跳の跳躍距離を比較している。それによると“この線まで………”型の指示の方がどの年齢でも跳躍距離が大きく、
両者の指示による差異は低年齢ほど大きい。同様のことを筆者らは日本の幼児について調査し、跳躍距離ばかりでなく、跳躍の
フォームや構え姿勢にも“ここまで”型の指示でより成熟した跳躍フォームがみられることを明らかにした。とくに“ここま
で”型の指示により、構え時間が大幅にのびる傾向があり、このことは動機づけとか「定位」といわれた心理学的な事象を、動
作分析的な手法で定見化しうることを暗示している。
マヌウイレンコは、直立姿勢の持続という課題を幼児に与えて、その持続時間をみている。場面設定には、特に指示を与えな
い場合、「歩哨」の役割をとらせる場合、「競争」をさせる場合など、いくつかのものを用意している。その結果、3〜6歳児で
は、課題設定の条件によって持続時間がいちじるしく変化するが、6歳以後はその差が少なくなることをみている。
これらの結果は、幼年期には、身体的発達レベルの把握のさいにも、運動機能以外の発達系とのかかわりや、統合された存在と
しての子どもの把握が、学齢期以後の場合より必要なことをしめしている。とくに随意運動の発達や意識の持続的な関与の必要
な調整機能の発達の場合は、ことば系とのかかわりのふかいことが明らかにされてきた。一般に、発揮された運動成果の上限値
の評価というこれまでの体カテストを検討する意図もかねて、子どもが課題をどううけとめるかといったインプットから反応
というアウトプットにいたる観察をいくつか試みた。それについて報告させていただき御意見をうかがいたい。
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