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 研究方法
 1.対象者
 対象者は、京都市やその周辺地域に在住し、老人福祉センターなどが主催する健康教室やスポーツ教室への参加者および 地域の老人会に所属する一般在宅高齢者である。本研究では、特に中枢神経系および運動器系に特別な支障を有しない年齢 60〜90歳の高齢者171名(男性31名、女性140名)を分析対象とした。なお、対象者の日頃の身体活動状況としては、散歩程度は時 々するが他の運動やスポーツは行っていない者が約4割、約6割(男性23名、女性82名)は、高齢期になってから始めた卓球、バト ミントン、水泳、太極拳、社交ダンスなどを週1回、約1〜1.5時間程度実施している者である。

 2.平衡機能の測定
 (1)片足立ちテスト
 フィールドで平衡性を簡便に評価できる方法として従来から用いてきた開眼および閉眼での片足立ちテストを行った17)。 測定の打ち切り時間は、閉眼60秒、開眼120秒を原則とし、それ以上続けられる場合は閉眼120秒、開眼180秒を上限とした。

 (2)重心動揺の測定
 測定には、被検者の直立時における足底圧の垂直作用力(center of pressure:以下重心とする)を変換器で検出し、これを電気信 号変化として出力する足圧検出装置(重心動揺計;Patella社、S510)を用いた。
 被検者を重心動揺計の上にRomberg姿勢(直立で両足の内側縁をつけて、腕を自然に体側に置く姿勢)で楽に立たせ、開眼の場 合は3m前方の視標を注視させた。先ず、直立姿勢(安楽立位)で20秒間の開眼と閉眼で測定を行い、次いで開眼で10秒間の直立姿 勢をとってから重心位置を随意的に最大限前方に移動させた最大前傾位、重心位置を最大限後方に移動させた最大後傾位での 測定を各々10秒間行った。各測定は過渡的な動揺が消失したところで開始するように注意した。重心動揺のパラメーターとし て、安楽立位での重心動揺軌跡長(足圧中心の累積移動距離)、重心位置(足長に対する踵からの足圧中心平均値までの距離;以下 G%と略)、ならびに直立位と最大前傾位の重心位置の間隔(以下A-C%と略)、直立位と最大後傾位の重心位置の間隔(以下C-P% と略)、最大前傾位と最大後傾位の重心位置の間隔(以下A-P%と略)を算出した。なお、A-C%、C-P%、A-P%とも足長に対する割合 である。

 3.歩行能の測定
 測定に先立ち、体育館内に木製の歩行台(長さ10m×幅0.8m×高さ0.1m)を仮設し、被験者には検者らが用意した同一仕様の体育 館シューズを着用させた。まず「気持ちのよい速度で自由に歩いて下さい」と指示した自由歩行を行わせた後、「できるだけ速 く歩いて下さいと指示した最速歩行を行わせた。歩行動作は、歩行台の中央1.8mを通過する時点を右側方8.6m地点に設置したデ ジタルビデオカメラ(ソニーDCR-VX1000)で撮影(60fps)した。本研究では、同一肢の爪先離地から次の爪先離地までのコマ数と爪 先の座標をビデオ画面から読み取り、歩幅(一歩の距離)、歩行速度(歩幅/一歩時間)、歩調(一秒当たりの歩数)を算出し、これを歩行 能の指標とした。

 4.他の体力要素の測定
 片足立ちテスト(平衡性)を除く体力要素の測定として、座位ステッピング(敏捷性:以下ステッピングと略)、長座位体前屈(柔軟 性:以下体前屈と略)、垂直跳び(下肢の動的筋力)、握力(上肢筋力)、息こらえ(耐久性)からなる5項目の体力診断バッテリーテスト を実施した16)

 5.統計処理
 平均値の年齢群間差は分散分析法を用い、男女間差はStudentのt-testで検定した。また、各2変数間の関連はPearsonの積率相関 と年齢と身長を制御変数とした偏相関を用い、相関係数の有意性は両側検定によった。歩行能に及ぼす年齢、体格、平衡性指標、他 の体力指標との相互関連は重回帰分析(stepwise法)によった。検定結果はp<0.05を有意性ありと判定した。


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