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 研究結果
 1.被.験者の体力と歩行能力
 表1に、年代別にみた被験者の体力および歩行能力の平均値を示した。10m歩行テストにおける女子被験者の所要時間、歩幅お よび歩行速度には、加齢に伴う有意な変化は認められなかった。なお、歩行能力のうち、男子の歩幅の平均値には女子との間で有 意な差(p<0.05〜0.001)が見られたが,所要時間および歩行速度には有意な差は認められなかった。
 表2に歩行能力と体力測定値との相関関係をまとめて示した。このとき歩幅は歩数から、所要時間から歩行速度を求めたので、 各体力要素に対する歩数と歩幅および所要時間と歩行速度との相関係数は符号が逆となる同様な相関関係によって示される。 そこで、結果の記述に際しては、歩幅と歩行速度に対する関係のみを取り上げてた。また、男子については年代が60歳代に偏って いたため、計算の対象から除外した。したがって、体力と歩行能力との関係は、女子のみを対象として検討を加えた。
 被験者の身長は歩幅(r=0.40、p<0.05)と有意な相関関係を示したが、単位身長あたりの歩幅との間には有意な相関は見られな かった(r=−0.26、p>0.05)。また、体重と歩行能力との間にも有意な相関は観察されなかった。さらに、体脂肪率、上体おこしおよび 垂直跳も歩行能力とは有意な相関を示さなかった。しかし、除脂肪体重と歩幅(r=0.38、p<0.05)および反復横跳と歩行速度 (r=0.37、p<0.05)との間にはいずれも有意な相関が認められ、柔軟性の指標である立位体前屈は、いずれの歩行能力変数とも1%水準で有意な相関関係(r=0.45〜0.49)を示した。

Table l. Physical characteristics, fitness and walking ability of the subjects.


Table 2. Relationship between walking ability and fitness in middle-and-old aged women (n=37)

*P<0.05, **P<0.01

 考  察
 1.歩行能力と年齢
 歩行速度や歩幅は加齢とともに低下することが知られているが12,13,14,19)、本研究における女子被験者の歩行速度 および歩幅に年齢による変化は認められなかった。これは本研究の被験者の年齢が、これらの先行研究と比較して、41歳から 65歳までの比較的狭い範囲に限られていたことで説明できる。すなわち、Himann13)によれば、歩行速度の年齢に伴う低下は 62歳以前では10年当たり1〜2%でしかないが、それ以降では12.4%(女子)〜16.1%(男子)へと増加し、およそ60歳を越えなけれ ば加齢に伴う低下率に増加は見られない8)。しかし、本研究の被験者のうち63歳以上の者はわずか6名でしがなかった。このた め、各年代ごとの歩幅や歩行速度の平均値に有意な差が観察されなかったものと思われる。
 本研究では、このような女子被験者集団を対象として、先行研究において報告されている柔軟性と歩行能力との関係をは じめとする体力一歩行能力関係について検討を加えた。



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