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 要  約
 中学校の運動部活動における運動量と部員の体力の関係を明らかにするために、サッカー部員(n=33)を対象として測定を 行った。被検者はフィールドプレーヤーのみとし、全員が同じ内容の練習を行っていた。部員をサッカーの技能水準により上位 群(n=13)および下位群(n=5)に分けて検討した結果、以下の知見を得た。
 1.練習全体の平均強度を%Vo2maxで表すと、全被検者の平均は45.4±8.8%であり、練習中に出現した%Vo2maxの最高値と形態 および体力との相関係数をみると、皮下脂肪厚(r=-0.459、p<0.05)および往復走(r=-0.532、p<0.01)との相関が有意であった。
 2.練習全体のエネルギー消費量と皮下脂肪厚、握力、背筋力、脚伸展力、往復走およびPWC170の間にそれぞれ-0.377(p<0.05)、 0.713(p<0.001)、0.427(p<0.05)、0.456(p<0.05)、-0.467(p<0.05)および0.471(p<0.01)という有意な相関が認められた。また、 ゲーム形式の練習中におけるエネルギー消費量と皮下脂肪厚、握力、背筋力、脚伸展力、往復走、PWC170および最大酸素摂取量の間 の相関係数はそれぞれ-0.479(p<0.01)、0.725(p<0.001)、0.507(p<0.01)、0.472(p<0.01)、−0.551(p<0.01)、0.570(p<0.01)およ び0.467(p<0.05)であり、練習全体のエネルギー消費量との相関係数よりも大きかった。
 3.上位群と下位群を比較すると、身長は上位群(160.5±6.7cm)が下位群(151.6±9.8cm)よりも有意に高く(p<0.05)、皮下脂肪厚 は下位群(33.1±16.3mm)が上位群(17.7±3.5mm)よりも有意に大きかった(p<0.01)。体力面では、いずれの項目においても上位群 の方が成績が良く、往復走および全身反応時間の2項目では有意差が認められた(それぞれp<0.01およびp<0.05)。
 4.練習全体におけるエネルギー消費量をみると、上位群は594±114kcal、下位群は490±117kcalであり、有意差は認められなかっ た。ゲーム形式の練習を行っていたときのエネルギー消費量は上位群が141.3±36.6kcal、下位群が100.2±30.7kcalであり、上位群と 下位群の差は有意であった(p<0.05)。以上のことから、全員が同じ内容の練習を行っていたにもかかわらず個人個人の運動量に は差がみられ、運動量が多い者ほど体力水準が高い傾向にあった。ゲーム形式の練習におけるエネルギー消費量に上位群と下位 群の間で有意差がみられたことから、運動量の多少は主に技能水準に起因していたことが示唆された。

 謝 辞
 本研究にご協力いただきました大宮市立三橋中学校(波多野巌校長先生)サッカー部顧問小島邦隆教諭ならびに部員の皆様 に厚く御礼申し上げます。


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