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7.ホスピス・フォンダンオン・リヴヌーヴ

 1988年にベック夫妻(ポールとダニエル)により創設されたスイスで最初のホスピスで,8部屋ある。ボランティアは25人で,うち3人が男性であった(ナースは8人,医師は3人)。
 ベック夫人の説明によると,ご主人は25年間がん患者中心の総合病院のナースであったが,がんの手術後退院してから入れる所を作りたかったので,がんの研究をしていたスイスのがんの財団に頼んで家を買う資金を出してもらったとのこと。室料は無料,保険,個人の寄付などによって運営されている。平均在院日数28日,入退院(レスパイトケア)を勧めている。カトリックのチャプレンが週に一度来て,祈祷会が持たれている。食事はスタッフやゲストも一緒にいただく。
 アートセラピー(週一度),フラワーセラピー(患者さんと花をいける)が行われていて,小さなコンサートも頻繁に催されている。壁には多くの絵が飾られていて,誰でも買うことができる。ペットはホスピスに必要だと思うとのこと,猫が1匹,犬が2匹いた。
 居間には薪のストーブがあり,天使が楽器を奏でているステンドグラスが目についた。この部屋では誕生日のお祝いなどもする。
 庭も広く緑がいっぱいであった。傾斜地に建っているので庭にも階段があるが,車椅子の患者さんにも庭を全部楽しんでいただけるようにと,車椅子のまま乗れるエスカレーターのような設備が施されている。
 遺体は2日間チャペルに安置される。遺族には行事の時に来てもらったりしているが,精神的ケアはなかなか難しいとの話であった。
 ボランティアの活動は毎週半日。ボランティアの教育については,?ナースと一緒に行動して覚える,?痛みのコントロールや介護の仕方は外で勉強する,?スピリチュアルな教育はダニエルとチャプレンが担当,?毎月心理学者と勉強会を開いているとのことであった。
 全体に無理をせず,それでいて小さな所まで目が十分に行き届いている,居心地のよいホスピスという印象であった。

 

8.クリニック・ラ・リニエール

 次に犬養道子女史(文筆家)が手術後にリハビリをしたというレマン湖畔のリハビリセンターを訪れた。ガラス張りの近代的な建物で,改修工事が継続中であった。大人だけの94床。半分が心臓のリハビリで,あとの半分は一般内科,整形,手術後,アレルギー,開放性精神科,糖尿病,内分泌などである。開放性精神科には,うつ病,アルコール依存症,ドラッグ依存症などの患者さんがいて,その方々には自然療法(絵画療法や音楽療法)を用いているとのことである。ジム,サウナ,スチームバス,フィットネスなど各種の設備が整っている。プールは夕方の5時半以降は,地域に開放している。
 入院期間は心臓病が4週間,内科が10日〜3週間,術後が2週間となっている。
 ここも,どこまで続くのかわからないほど広い縁の庭が広がっていた。

 

9.ジュネーブ州立大学病院

 最後には,犬養道子女史が手術を受けた病院の主治医Dr.アンブロゼティーを訪ねた。ここは1.000床の腫瘍専門の病院である。
 スイスは人口700万人で,州立大学病院は5つある。
 患者さんには告知と見通しを,チャートをすべて見せながら率直に話す。どんな情報でも与えることが大切と話された。

 

 

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