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2.頭頸部癌の症状マネジメント

 症状マネジメントの一つとして,ホスピスでもよく遭遇する頭頸部の癌が取り上げられた。頭頸部癌は肉体的な痛みとともに,顔貌の変化を伴うことによる精神的な苦痛も大きく,ホスピスでは患者に外見の変化による疎外感を感じさせないことが大切であることを確認された後,具体的な症状マネジメントの説明に入られた。痔痛,食物摂取困難,悪液質と体重減少,呼吸の問題,創部処置や悪臭の問題口腔内のトラブル,出血など,コントロール困難なさまざまな症状が出現する。痛みに対しては鎮痛剤による治療とともに,感染治療も重要である。神経性の痛みに対しては,ステロイドや鎮痛補助薬,心臓病の治療で使用されるFlecainidまたケタミンの有効性なども説明された。また,頸動脈から,あるいは創部からの出血の可能性があり,出血時の対応として患者の側を離れず声をかけたり,体に触れるなど患者を不安にさせないことが重要である。
 出血は家族やスタッフにとってもストレスとなるので,出血の可能性がある時には赤いタオルを用意しておくなどの配慮も必要であると述べられた。

 

3.緩和ケアにおける救急

 緩和ケアにおける救急として,脊髄圧迫,上大静脈症候群,高カルシウム血症,大量出血,終末期の不穏などの問題を取り上げ,それらの原因,症状,その治療法などについて説明された。脊髄圧迫については急に発症することもあるが,背部痛や感覚の微妙な変化が数日〜数週間前から出現することが多いので,患者の訴えをよく聴き,身体所見をとり,徴候を早期に発見し,放射線療法によって麻痺を起こさせないなど,苦痛の発現を予防することの重要性も強調された。高カルシウム血症については,数日前まで元気だった患者が,急に癌の進行した末期の状態と似た症状を呈し,家族の苦しみが大きいので,家族への配慮が重要である。治療については,実際に癌が進行している場合もあるので,その点を考慮して治療内容を検討する必要があると述べられた。そして,最後に死期が迫っている時に,頸動脈からの出血など重大な苦痛状態が起こった時には,難しいことであるがまず落ち着いて,患者に声をかけたり,体に触れるなど,誰かが患者の側にいて患者を不安にさせないことが重要であることを再度強調された。また,緊急時には家族に部屋から出てもらいがちだが,むしろ一緒にいてもらい,死が迫っている場合にはお別れをしてもらうのがよいだろう。それは死別後の悲嘆という点からも重要であるとまとめられた。

 

 

 

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