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3.K音による測定法

 聴診法ではK音によって収縮期圧と拡張期圧を測定することはすでに述べたが,これらの音をマイクロフォンで収音して,自動的にK音シグナルを識別させることで診断する。第1相の音の始まりでは,雑音との鑑別が必要で,ひとの耳では雑音と信号音との鑑別は容易であるが,機械では必ずしも単純にはいかない。通常の聴診でも紛らわしいことが少なくないが,多くは拍動のリズムと合わせて連続して3拍以上音が聴かれるときにK音としてとらえられる。雑音の発生は確率からいって脈拍のリズムとは無関係であるので,K音の発生が予測される時相にのみ音をとらえる目的で心電図に同期させる方法もあるが,それでも完全ではなく,心電図の信号をとらえるためには電極の装着が必要であって,患者の負担もそれだけ多くなる。従って,測定のさいには雑音の混入をできるだけ避けるような配慮が必要となる。また,マイクロフォンの特性をK音の周波数特性に合わせて10-100Hzでピークになるようにすることで,それ以外の雑音を除外することもできるが,雑音にはこの振動域のものも多くあるので完全な方法とはいえない。
 拡張期圧を第4相にするか第5相にするかは耳での聴診法の場合とまったく同様で,両音の機械的識別には大きな問題はないが,同じく雑音との鑑別が困難なことから,実測値とはかけ離れた値を示すことも少なくない。
 血圧の自動測定は先にも述べたように安静時での測定が主体となるが,今日では運動負荷時の血圧測定も行われることから,このような場面での自動測定に対する需要も多くなっている。実際に運動負荷用に開発された機器もあるが理想的なレベルにはまだ達していない。しかし,運動時の血圧測定自体が測定法のいかんを問わず困難な問題を含んでいるので,実用の面のみに問題を絞れば,ひとの耳での測定と機械での測定の間には大きな差はないといえる。しかし,実際にはこのような機器は価格の面からみて決して安価ではないので,ひとの耳で測定する方法が現状では最も適した方法として認められることになる。

 

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