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 ところが,交感神経が緊張していて,平滑筋がやや収縮していると,血管壁の緊張が強くなり,伸展しにくくなる。甲状腺機能亢進症ではよくこのような状態になっており,過剰運動反応といって,体を休めていても,運動しているときのような状態となり,循環状態が活発である。そのさいの圧容積曲線をみると,同じ量の血液が血管に出された場合に,血管内の圧の上昇が大きくなる。したがって,甲状腺機能亢進症で血圧が少し高くなるのは,心拍出量が多く,弾性血管の緊張が強いというような機序によっている。
 さらに重要なことは,加齢によって弾性線維が変性して伸びきってしまうと,膠原線維が引き伸ばされた状態になる。このような場合,血管内の容積が広がるので,レントゲンでみると,大動脈の幅が広くなり,そして長さも伸びるので,蛇行するようになる。大きな血管系の内腔が広くなるということは内圧が下がることになり,したがって,拡張期圧が少し低下する。そこへ一定量の血液が流れこんだ場合,圧の上昇は著しく大きくなる。これが老人によくみられる収縮期性高血圧の機序で,加齢とともに弾性線維が次第に変性して減少していくことに関連している。
 従来,大動脈から小動脈に至る血管は,“第2の心臓”といわれ,心臓から駆出される血液をいったん受け入れておいて,心臓が休む拡張期に収縮して血液を末梢へ送り出すが,その機能が血管壁に生じる変化によって低下する。Burtonらは,そのことを説明する実験モデルを示している(図20)。すなわち,血管片について長さと張力の関係をみると,正常の血管では長さが伸びるにつれて発生する張力も●印のように増していくが,これに蟻酸を加えて膠原線維を取り除くと,血管片の主な構成成分は,弾性線維のみになるので,伸展にさいして張力の発生はきわめて少なく,ゴム紐のような伸びを示す(○印)。
 これに対して,トリプシン処理をすると,今度は弾性線維がなくなり,膠原線維が残るのであまり伸びずに大きな張力を発生する(▲印)。

 

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