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知的障害者福祉研究報告書
平成5年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第1回 精神薄弱者福祉研究会 資料

米国精神薄弱者福祉事前調査報告書(抜粋)

ロードアイランド州

○A. キャスリン・パワー 精神衛生・精神遅滞・病院部、ディレクターの挨拶
ロードアイランド州では、「関係」と「コミュニティー」が重要な用語である。
言い換えると、発達障害者が関係を保持し、コミュニティーの一員となることが重要である。

○ジョン・スーサ博士 発達障害計画委員会代表の挨拶
私は、障害者の親としてこの委員会のために働いている。委員会は25人のメンバーで構成されており、知事に対して、家族のニーズを代表して意見を出し、親の会を組織し、代表している。

発達障害者に対する委員会の3つの目標は、「自立」、「生産性」、「統合」、および「家族への支援」である。

それには、?@障害を持つ子供たちの包括教育(一般の子供と同様の)
?A同じく社会への参加
?B同じく家族を支える(コミュニティーに根づいたサービス)
のためのビジョンを持ち、実現させていくことである。
また、親たちへ季刊誌を発行、広報活動として、一般の人達へのPRなども行っている。

委員の1/2はボランティア、1/2は政府機関の代表者と民間機関の代表者で構成される(給与は別)。
また、委員会には、人権、制度の変更、およびコミュニティーとの統合に関する小委員会が設置されている。

○ロバート・カール博士、精神衛生・精神遅滞・病院部、エグゼクティブ・ディレクター

ロードアイランド州、精神衛生・精神遅滞・病院部の沿革の説明

1907年 精神遅滞者のための最初の施設が開設された。これは精神遅滞者のための州の最初のプログラムである。

1960年代 上記の施設に1,300人以上の人々が収容

1950年〜1960年代
ロードアイランド精神遅滞者連合(ARC)を設置(精神遅滞者の公民権、および新たなサービスを要求する親の運動)。
それまで、州は居住施設のみを補助。

1975年〜1978年
上記の施設において、スキャンダルが生じ、訴訟に発展。

1980年代 新しい制度へ修正される。サービスの拡張、予算の増額、精神遅滞者の居住の増加

◇過去10年間の活動

?@職業訓練プログラム 700人から3,000人に参加者が増加

?A家族への支援 多くの新たなサービス(レスピット:家族へ休息を与える間の介護あるいは子守り、家事援助サービス、コミュニケーション機器、およびその他の設備の提供、おむつ等の支給等)

?B基金の拡張 10年間で連邦政府からの援助金を増額

◇現在の状況

?@190のグループ・ホーム(4〜6人が居住)、400人がアパートやコンドミニアムに居住。

?A合計1,400人がコミュニティーの施設に居住

?B5,000人の成人が少なくとも一つのサービスを受ける。

?C18歳以上のプログラムのために、$l億4,000万(約154億円)を支出。

精神衛生・精神遅滞・病院部の現在の考えは、すべての障害者に参加の機会を与えることである。当部は、障害者を「ウェイティング・リスト」に載せる方針をとっていない。州は、発達障害者に関連するいかなる要求にも直ちに対処している。(とはいえ、もし、障害者が、住む場所が欲しいとなった場合、適当な場所を捜すには多少遅れるかもしれない。)
ラッド・センター(ロードアイランド州にある大型居住施設)には、40人の入居者が残っているに過ぎず、来月には全員退所する予定である。
ラッド・センターは、1993年11月に閉鎖される。これにより、ロードアイランド州は、大規模な州の居住施設を持たない2番目の州となる。
カール博士は、施設からグループ・ホームヘ、そして独立した生活へと段階的に移行していく必要があると考えている。この理由から、ロードアイランド州は、施設をうまく閉鎖させ、また施設に収容されたことがない障害者にサービスを提供できると考えている。さらに、博士は、ロードアイランド州が成功する上で、サービスの継続が不可欠と考えている。

◇将来の計画

?@各利用者が自らの生活を管理できるようにするために、改革すること。

?A利用者、および家族がサービスを変更できるようにさせ、利用者、家族および友人がサービスの内容、および提供を管理し、希望するやり方でサービスを受けられるようにすること。

?B利用者および家族は、自らの予算を管理するとともに、変更する権限を持つこと。
言い換えると、州は利用者および家族に決定を任せること、およびエージェンシーも決定できること。

?Cプログラムの成功は、利用者の満足度の測定、技術の改善、および相当な費用で目標を達成させることにより、評価すること。

○リチャード・パターソン 精神遅滞者連合執行委員会(CEARC)議長の挨拶
日本政治学の教授、元上院議員

ロードアイランド州では、発達障害者のために8つの地区センター(リージョナル・センター(註))があり、これらのセンターは相互に密接に接触している。

・ 生まれてから亡くなるまでのサービスを行う
・ サービスの提供者であり、擁護者でもある
・ センターの長は、(州が小さいため)すぐ集まることができる
・ 情報の交換が早い、アイディアの交換
・ 現在は、その過程が変化しつつある

(註)リージョナル・センター(regional center)は、一般的には、初期に作られた精神遅滞のための中間施設の一つ。1970年代に、定員5,000名という巨大な州立施設を徐々に縮小し、州を地区ごとに分割し、200名位の居住施設を建てていくようになった。これを中間ケア施設(ICF/MR)として認めている州もある。これが、コロニー(colony)とか、病院あるいは収容施設(hospital)と呼ばれていた大規模収容施設と区別されるコミュニティーの居住の場であったが、現在では、さらに施設退所を進めるべき対象と目されている。
(冨安芳和編著:「コミュニティ生活を創る」より)

○メアリー・マッデン
オーシャン・ステート・アソシエーション・オブ・レジデンシャル・リソース
(OSARR)、理事長の挨拶
18歳以上の精神遅滞者に居住サービスを提供している20のエージェンシーの代表
はじめは、グループ・ホームを数名の人達で始めた会であった。

目的:障害者を含むすべての人が、「差別のない包括的なコミュニティー」で生活すること

活動:?@スタッフの訓練、および養成
?A会議、職業教育
?Bメンバーのエージェンシーに、政府の規則および規制を説明すること
?Cメンバーのエージェンシー間のコミュニケーションの促進

エージェンシーの役割は、グループ・サービスの提供から、個別サービスの提供へと変化している。過去においては、エージェンシーはすべてのサービスを管理していたのであるが、それが(提供から利用する個人の選択へと)変わりつつある。

◇OSARRの20のエージェンシーと、CEARCの8つの地区センターとの関係
地区センターは、デイ・サービスおよび居住サービスを含めて、出生から死亡に至るまで、サービスを提供している。

これらの8つの地区センターは、OSARRを構成する20のエージェンシーに含まれている。OSARRのすべてのエージェンシーはグループ・ホームの運営、アパートおよび生活扶助等の手配を含めて、居住サービスを提供している。

○ドリーン・マクコナギー、「代わりの生活のための親と友人」(PAL)理事長
これは、親の組織である。彼女は家族を教育し、支援するとともに、障害児を持つ親を結束させている。家族への教育は、家族が障害児の良き保護者となるようにすることを目的としている。リージョナル・センター、および州オフィスで働く

○ジェームス・ヒーリー、ロードアイランドARC理事長
ジェームズ・ヒーリー氏は、居住施設「ラッド・センター」における苦情、およびセンターに対する訴訟の提起者である。

人口の2%(20,000人前後)が精神遅滞者となるが、90%はマイルドな精神遅滞であり、その内の75%は貧困が原因である。
ARCの主要な責務は、精神遅滞者における生活の質の向上を推進することである。
推進する4つのカテゴリーは、次の通り。

?@予 防:出生前のケア、胎児のための十分な栄養、十分な保健、医療を含む。

?A早期発見、早期介入:出生前のスクリーニングを含む。すべての新生児を検診し、直ちに問題に対応できるようにすること。同時に家族も検診する。その他の分野としては鉛中毒、予防接種。

?B特殊教育:障害児全員が普通学級で教育されることを目標とする。

?C成人プログラム:生活の質の向上、自立、選択、および健常者と同様な生活をすることに重点を置く。
基本的な役割は、障害者に一般の人達と同じサービスをすることである。

○ドロシー・ザネラ、北ロードアイランドARC、居住サービス管理者
1991年頃まで、北ロードアイランドARCもまた、住民の介護に携わっていた。
現在、当組織は精神遅滞者の世話をし、支援している。


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