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4.4 長周期波の出現状況のまとめと考察

 

?20分間の波形記録の周波数スペクトルから得られる長周期成分のエネルギーは、2時間の連続波形記録から得られるものと比較して、300秒以下の周波数帯では,概ね一致する。

?波浪の全エネルギー(m0)と、30秒以上の長周期波成分エネルギー(m0L)を通年の観測値で比較した。m0Lはm0の0.1%から10%程度の値を示しており、m0Lとm0の比は地点毎に一定ではない。また、有義波高の大小によるm0Lとm0の比の相違も必ずしも明らかにはできなかった。しかしながら、m0Lはm0。に対応して連続的に変化し、高波浪時に大きく、低波浪時に小さい値を取ることが全観測地点で示された。

しかし高波の立ち上がり期や波浪の減衰期にあたっては、m0Lの変化はm0とは一致せず、立ち上がりが早くなることや、減衰が遅くなることが多く見られた。

また、日本海側や太平洋側の近接する数観測地点で、ほぼ同時にm0Lが急激に大きな値を示す例も数例確認された。

 

?長周期波の出現特性を長周期成分の有義波高に対応すると考えられる4√m0Lで整理し、観測水深とあわせてみると、長周期波が自由進行波であれば、長周期波の波高はグリーンの法則により水深の-1/4乗に比例することになる。他方、ラデイエーションストレスによる水位変化は、風浪の場が一定であると仮定すれば水深の-1乗に比例することになるが、近接する釜石と仙台、潮岬と室津などでは1/4の線に沿った変化を示し、-1乗のような急な勾配は見られなかった。このことから、長周期波は拘束波よりは自由進行波に近い性質であることを示唆している。

 

?4√m0Lとの定義する周期帯を、30,60,300,600秒以上として、各季節の長周期波高の平均値を求めたところ、日本海では夏季に低く、冬季に高い値を示すものの有義波高ほど顕著な季節差は見られず、平均長周期波高は5〜10cmの値を示している。

 

 

 

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