日本財団 図書館


2. フィリピンの現状

 

2.1 政治・社会

 

近代的民主主義国家の建設を目標として、1946年に米国からの独立を果たした同国だが、その後社会・経済改革の遅れから持続的経済発展を達成することはできなかった。

1965年から20年間続いたマルコス独裁政権も、経済破綻と民心離反を招き1983年のアキノ氏暗殺事件を契機に、事実上の市民革命によって1986年に打倒された。続いて成立したアキノ政権は民主的政治体制の整備という主要課題につき一定の成果を上げたが、6度に上ったクーデター未遂、自然災害の多発などの忙殺され、その他は目立った成果を挙げるには至らなかったと言われている。

1992年に成立したラモス現政権は政局安定、経済再建、治安回復等を重要課題に据え、1996年のAPEC会議を成功に導く等着実に成果を挙げている。

治安面では軍内部の反政府組織である国郡改革運動(RAM)との和解や同国最大のイスラムゲリラ、モロ民族解放戦線(MNFL)との和平協定を締結しており、更に外交面では1992年の在比米軍基地変換を契機に、米国中心政策からアジア太平洋諸国重視に大きく転換した。

また、ASEANの一員としての立場を強調し、域内での経済関係を強化、同国への投資拡大を目指す経済外交を、政府首脳自ら積極的に展開している。米国との外交関係は在比米軍の撤退以降疎遠となったが、輸出の約4割が米国向けであるなど、経済関係は依然として重要である。APECマニラ会議の際には、クリントン大統領が多数の財界人を伴い訪比、総額数億ドルに上がる投資誘致のトップ交渉も行われた。

日本との間には両国の経済格差が生み出す不法就労などの課題も残されているが、両国は貿易、投資、ODAなど緊密な相互関係を維持しており、同国も日本の国連常任理事国入りを支持するなど更なる友好関係を推進していく意向である。ASEAN諸国とは、AFTAの共通特恵関税(CEPT)導入により、経済面を中心に一層の関係強化が図られている。域内貿易、投資の拡大、分業体制の促進は今後同国経済に好影響を与えるものと予想されている。

このような同大統領の政治・計させい安定化の実績は国内外から相応の評価を得ており1998年6月に任期満了を迎える同大統領に対しては、再選・任期延長への期待が強いが、同大統領は再任の意思のないことを表明している。

但し、同大統領は1997年初の年頭教書で主要課題として、

?@治安の維持・向上

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION