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アを主成分とする親油性栄養塩(栄養塩1:油10の割合)、第二のプロットは市場に出ているNH4やN03からなる水溶性栄養塩(親油性と同濃度)、第3は何も使用しなかった。各プロットは20のサブプロットに分割され、1年以上にわたりサンプルがランダムに集められた。

b. 結果

油分解微生物はどのプロットでも増加し、実験中を通して高い数字にとどまった。親油性栄養塩と水溶性栄養塩のバクテリア総数の違いが計測された。(親油性の方が数字が大きかった。)

6月から9月の間に低・中量nアルカンの減少が計測され、消失率は栄養塩のプロット2つでは45〜85%、栄養塩なしのプロットでは10〜25%であった。

1984年6月には、パラフィンは栄養塩のプロット2つではすべて分解が終わっていたが、栄養塩なしのプロットでは20〜30%がいまだに残存していた。

n-C17/pristaneとn-C18/phytaneの率も栄養塩使用の方が消失率が高かった。しかし、statistical significance tests(統計的裏付けテスト?)は行われなかった。著者は、栄養塩2者のプロットでは統計的に重要な違いが見られなかったと結論づけた。

また、油汚染された海草を、親油性栄養塩とともに加えたところ、効果的に浄化が進んだとしている。しかしこの方法は一般に、効果が認識されていない。

反省点としては、ここでも、先の実験と同様のミスが起こっている。Halmoの実験で2種の栄養塩が使われていることから、コントロールも2つ必要となる。

一つは、ウレアやリンを含まない親油性物質を与え、もう一つは栄養塩なしの海水を与えたものが必要であった。サンプル収集について言えば、サブプロットをいくつもうけても、同じプロット内でサンプリングする限り、独立のプロットとは言えず、実験エラーの推定に使えない。同じプロット内のreplicateサンプルはプロット内のばらつきを定義することしか役立たず、浄化効果を示せない。筆者は統計分析をデータの一部でしか行っていない。フィールド実験で用いた浄化方法の情報が不足していることや、効果測定にpseudoreplicateを使用していることから、この報告は油流出バイオレメディエーションの効用づけには信憑性に欠ける。

 

(4)1985年11月のNy Alesund(Kings Bay),Spitsbergenの海岸線流出事故対応[2]

marine gas oil(ガス油)が88,000L流出した。ここで初めて現実の事故対応としてバイオレメディエーションが使われ、Spitsbergenは初期のバイオレメディエーション研究の中心地となった。

このケースでは、北極の過酷な環境要因から、バイオレメディエーション以外の浄化方法を用いることが事実上不可能であった。

 

(5)1986年夏、85年流出事故の調査つづき

 

 

 

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