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信号の識別の困難性に関しては、将来の課題として運用学、航海学、人間工学、その他の諸科学から学際的にアプローチして、あるべき姿について模索する必要がある。

また発光信号装置を有する船舶は、汽笛により信号を行う場合に、発光信号を併用することができることとなっている(海上衝突予防法第34条第2項、第5項、第40条)。夜間は、汽笛をどの船舶が発しているかの判断が難しい場合もあるので、この種の装置は有効であると考えられ、船舶交通の安全を図るための手段の周知および励行、さらに新たな改善策についても検討する必要があると思われる。

 

4.4新しい信号方法についての考察

今般実施したアンケート調査によると、夜間の行先の信号について現行の信号方法に代わり得る信号方法を要望する意見が多数見られた。

すなわち、夜間の汽笛信号による行先の信号について、どの船が汽笛を鳴らしているのか判別できないという意見が多数あり、その中には、たとえば、自動車のウインカーのように変針する方向を具体的に示す信号方式の提案が見られる。

そこで、近年、わが国において研究・開発が進められた二つの新しい信号システムについて、以下その概要を紹介する。

 

(1)灯火による進路信号方式

視認距離2海里以上3海里程度を有する灯火(海上衝突予防法第34条第1項に規定する法定灯火以外の要件を満たすもの。「進路信号灯」という。)を船首尾線に対して直角に複数(3個以上5個)を設置し、灯火を変針方向に順次次点滅する方式(この方式を移動点滅方式と称している)である。これを周囲の船舶から見ると、光(白色)横方向に移動するように見え、かつ、その光の移動は、変針方向を示すようになっている。

たとえば、右に変針する場合には、光は右方向に、左に変針する場合には、光が左方向にそれぞれ移動するように視認される。

この信号を「進路信号」と称し、以下のような法的性格および運用上の指針が考えられている。

まず、進路信号は海上衝突予防法に規定する操船信号(法第34条)および海交法に規定する行先の信号(法第7条)とは無関係で、補助的信号と位置づけ、任意信号としている。

次に、当該信号は針路を実際に変更する前に発信すること、針路の変更の大小にかかわらず、変針を意図して操舵する場合には発信すること、針路の変更が継続している間信号を継続して発信することとしている。

なお、当該信号を発信後変針を中止する場合には、全ての進路信号灯火を一斉に点滅(固定点滅方式という)することが考えられている。

また、操舵装置との連動について、基本的には可であるが、変針時の当て舵の際および保針のための操舵の際それぞれ発信しないように装置されていなければならないと

 

 

 

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