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参考資料5.4-1

過去に為された東京湾における船舶航行の安全に関する調査研究

 

東京湾における船舶航行の安全を確保するための調査研究は過去より様々な分野・方面で検討が為され、その結果あるものは状況を改善するために施策等に反映される等実行に移されつつ今日に至っている。

ここでは近年検討された主な調査研究を以下に紹介することとする。

 

1. 「海上交通量の総量規制に関する調査研究」日本海難防止協会(昭和52年度〜54年度)

昭和49年東京湾で発生した第拾雄洋丸衝突事故以来、内外において大型船舶の海難事故が相次ぎ、関係者より我が国沿岸の海上交通安全の問題について、総合対策を検討するように強く提議されるようになり、その中で、海上交通量の総量規制に関して強い意見が出された。

「海上交通量は、背後地の経済活動に関連する輸送の海上依存度に左右される。従って、ある海域における海上交通量は地域の総合開発計画、特に産業構造および産業立地政策と海上交通容量とに、相互関連することが多い。ところで総量規制を考える場合、何をもって総量とするか、何をもって規制の判断要素とするかについては、必ずしも関係者に共通の認識があるとはいえない。従ってその共通の認識を深め、この問題の究明に役立たせるために、日本海難防止協会においてはさらに海上交通量の実態を十分調査把握して、問題点の摘出に積極的に取り組む必要がある」との方向付けをもって、標記委員会を設け、昭和52年度より3年間、問題点の摘出に取り組むこととなった。

 

<作業方針>

(1) 理想的海上交通容量に船舶運航上の技術的修正を加味したシミュレーションにより、仮設的実用海上交通容量(運航者から見たここまでなら我慢のできる交通容量)を決める。

 

(2) この仮設的実用海上交通容量に、事故対処能力等の社会的修正を施して実用海上交通

容量を決める。

 

(3) 船舶の大きさの上限として喫水制限を考える。

上記作業方針にもとづいて調査研究が為されたが、仮設的実用海上交通容量を明確にとらえる作業と、それに伴う社会的修正作業等は難渋し結論を導くまでには至らなかった。しかしこれらの海上交通量の総量規制に関する概念がある程度明確にされ、適切な交通量(実用海上交通容量)を導く手法と見通し等について共通の認識が高められたとされており、また「海上交通量の総量規制に関することは、国土開発政策・首都圏の物流政策・漁業対策等総合的に検討すべき課題であり、問題点等について短期間のうちに具体的な結論を出すことは困難であるので、今後さらに研究を進める必要があると思料する。」と結ばれている。

 

 

 

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