日本財団 図書館


4.2. 波浪中復原性計算プログラム

 

荒天中における船舶の復原性は、横風及び横波中で横傾斜する船の復原力と外力との間の関係を規定する復原性基準として我が国では船舶復原性規則が、またIMO(国際海事機関)ではA. 167及びA. 562としてすでに実用化されている。これらの指標と要件は静水中のGZ曲線と横風及び横波中のGZ曲線に関するもので、転覆に対する安全性を保つべくその基準値が定められている。

これに対し縦波中では合理的な縦波基準を定めることが現段階では困難なため、危険を回避するための操船マニュアルとしてSLF小委員会(復原性満載喫水線漁船安全小委員会)において付属資料に示す「Guidance to the Master for Avoiding Dangerous Situation in Following and Quartering Seas (追波及び斜め追波中の危険な状況を回避するための船長へのガイダンス)」(以下、操船ガイダンス)が採択され、現在MSC(海上安全委員会)Circularとして回章されている。追波中で操船上注意すべき危険な現象としては、次のような現象が指摘されている。

 

● 復原力減少(Pure loss of stability)

 

船が縦波の中にあるとき、船と波との相対位置に応じて船の復原力が変動し、船の長さとほぼ等しい波の山に船体中央部が位置したときに復原力が減少する現象。

 

● 波乗り (Surf-riding)

 

波長が船の長さに比べて長く波高が大きい追波中を波速と同程度の速度で航行するとき、船が波の下り斜面で加速され、そこに捕捉されたような形で波とほぼ同じ速度で走らされる現象。

 

● ブローチング(Broaching-to)

 

追波中を航行中に突然舵が効かなくなる現象。

波乗り状態で船が波の進行方向に対し偏角をもつと、保針のための操舵にもかかわらず、波による回頭モーメントの作用により急速に回頭し、それによる遠心力によって船体傾斜も急激に発達して、場合によっては転覆に至ることがある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION