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リスク管理の目標

このプログラムの最初の作業は、一連のリスク管理の目標を作成することであった。これらの目標は、Marsリスク管理技術者によって、彼の経験、シェル・オフショア社の安全ガイドライン、北海におけるPiper Alphaの事故に関するLord Cullen報告とAuger TLPのために実施された損失管理研究(Loss Control Study)に基づいて作成された。Marsリスク管理プログラムの目標を以下に詳しく述べる。

1. 施設をできる限り慎重に、ヒューマン・エラーの原因となる状態を取り除くようにすること。ヒューマン・エラーは、現在の大産業事故の多く(大部分でないにしても)を段階的に拡大する原因となり、それを可能としてきた。これらの大産業事故には、Piper Alpha、Phillps Baytown、スリーマイル島、チェルノブイリやその他多くの事故が含まれている。「ヒューマン・エラーはおそらく、化学処理産業における人命の損失、人員の重軽傷と財産の損害の大貢献者である。」*1 会社内部のデータや産業データはまた、かなりの数の小さな作業事故もヒューマン・エラーを原因としていることを示している。これらの小さな作業事故の人的及び金銭的コストは、累計するとかなりのものとなる。ヒューマン・エラー軽減プログラムの目標は、大惨事損失のみならず小作業損失をも最小限にすることにあった。

2. 危険警報・防止システム(Hazard Warning and Prevention System)を備えること。大事故の可能性のあるたいていの処理施設について、警報・自動停止システムは、可能性のある事故に対してかなりのレベルの軽減をもたらした。

3. 危険警報・防止システムにおいて冗長性を確保すること。この目標は第一に、API/RP14Cに含まれる指針に従うことと構造的リスク分析技術によって明確にされた範囲にまでその指針を拡大すること等に焦点を置いている。

4. 大事件を阻止し、制御するために緊急対応及びあつらえの消火能力を提供すること。リスクにかけられる人員数及び投資の大きさは、事故軽減チームの必要性とそのチームを組織し、装備させる能力を示した。これらのチームが適切に装備された場合には、人命と財産の損失を軽減し、又はなくすことができる。

5. 欠点(矛盾)のない上甲板構造物及び上甲板構造物設計を提供すること。材料及び設計の欠点は場合によっては、人命及び財産の損傷や損失の結果となる機械的及び処理の欠陥を定期的にまねく。これらの欠点を除き又は少なくとも最小限にすることは、リスクを軽減するであろう。

6. 事故の発生や拡大の機会を最小限にするための設備の配置、設備の型式及び材料を利用すること。配置、材料及び設備の型式は、事故の発生や拡大の可能性に本質的な影響を与えることができる。

7. 炭化水素の通常時及び緊急時の残量を最小限にすること。この目標の趣旨は3つあり、まず小事故が拡大する可能性を軽減すること、事故を制御できる見込みを増加すること及び事故による損失を最小限にすることである。

8. 設計及び建造工程での変更を管理する手段を設けること。設計や建造の作業の中での不適切な変更は、その施設に大事故及び小事故をもたらしてきた。変更管理はこの種の事故を除き、最小限にするはずである。

 

 

 

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