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は じ め に

 

海洋科学技術の振興を図るためには、次世代を担う青少年の人材を育成することが不可欠である。しかしながら現在、社会問題にもなりつつある「青少年の理科学離れ」といった現象により、今後、科学技術の分野においても、研究者や技術者の不足が懸念される。「理科離れ、科学技術離れ」の背景には、小・中・高等学校における理科教育時間数の減少、またそれに伴い、本来理科教育の原点であるべき、実習や実験といった理科の楽しみを喚起するための時間を持てないことが大きな要因となっていると考えられる。とりわけ、海洋科学技術分野に関しては、小・中・高等学校で学習する機会は海洋生物以外にはほとんどなく、青少年が学校以外の場で海に接するのは釣りや海水浴などの海洋レジャー以外には極めて少ないというのが現状である。このため、青少年の海洋科学技術に対する関心が薄れ、将来海洋科学技術の研究開発を志す者の増加が望めなくなったと共に、ひいては研究の推進に必要な人材を確保することが困難になることが予想される。

そこで海洋科学技術センターでは、平成6年度から7年度にかけて「科学技術に関する調査」という独自の調査を実施し、「青少年の理科離れ、科学技術離れ」の実態と「当センターに求められる研修内容」等を把握することとなった。その結果、理科離れ、科学技術離れの背景には、現在の学校教育におけるカリキュラムの問題や受験問題などが大きな要因となっていることが明らかになったと同時に、青少年を直接教育指導する教諭たちの多くが、海洋についての知識が乏しいために、彼ら自身の海洋研修への参加意欲が高いことも判明した。これらの結果を踏まえ、当センターでは、科学技術庁が中心となって平成7年度から実施している「サイエンス・キャンプ」と並行して、平成8年度より、日本財団の補助を得て、独自に「マリンサイエンス・スクール」を実施することとなった。

本スクールの特徴は、地域を限定し、高校生のみならず、教育現場への波及効果を期待して、高校教諭をも対象としていることで、初年度は北海道地区の高校生・高専生及びその教諭を対象に行なった。そして、今年度は、沖縄・鹿児島・宮崎・大分県の各県の高校生及びその教諭を対象に夏休みの間にそれぞれ3泊4日の日程で1回ずつ実施し、さらに年度末の3月には高知・愛媛・長崎・熊本県の4県の高校教諭21名を対象に2泊3日の日程で実施した。今後は、これらの研修内容に加え、本スクールの一環として、調査船等の一般公開に合わせた当地でのイベントやセンターで所有する船舶を用いた洋上研修等も実施していく予定である。

 

平成10年3月

海洋科学技術センター

普及・広報室

竹内 久美

 

 

 

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