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第1部 基 調 講 演

 

「運輸と地球環境問題」

名古屋大学大学院教授 林 良

 

ただいまご紹介いただきました名古屋大学の林でございます。 きょう私にいただいたテーマは 「運輸と地球環境問題」 ということでございますので、 最初の私の講演のところでは、 全体をどういうふうに整理して考えればいいかというお話をさせていただきたいと思います。 地球環境問題というのは非常に雲をつかむような話でありまして、 たまたま京都で会議があるということで毎日毎日ニュースが載っているということになっているくらいにみんな思いがちなんですが、 しかしながら、 大変大きな影響が出てくるであろうということであります。 じゃあ自分たちが一体何をすればいいかということを考えるときに、 自分が車を乗るのを1カ月に一回減らすとか、 そういうことが交通と地球環境とか、 あるいは運輸と地球環境といったときに、 一体どれくらいの貢献をしているのかとか、 自分のやっていることが役に立っているのか、 それとも逆に働いているのか、 そういうことを理解しておくことが必要だろうと思われます。 後半のパネルディスカッションでもいろいろな議論が出てくると思いますけれども、 私のところはそれをなるべく単純に、 それぞれの対策というか、 それがどんな位置づけにあるのかということを理解するということにしたいと思います。

それでは、 ちょっとスライドをお願いします。

これは、 バンコクなんですね。 皆さん、 この中でバンコクへ行かれた方がかなりおられるかもしれませんが、 バンコクで現在、 往復の通勤時間が8時間を超える人が大体10%くらいになってきたと言われているわけです。 8時間ですよ。 たいていの人は1日の3分の1は働いて、 3分の1は寝て、 あとの3分の1は食事をしたりいろんなことをするんですが、 バンコクの場合には、 あとの3分の1を実は車の中で過ごさなくてはいけない、 そういう状況に陥っているわけです。 こういう世界で最も大きい駐車場とも言われている通りがあるわけであります。 こういうふうに非常に車が増えてくる。 バンコクの平均所得は大体いま一人当たり 2,000ドルくらいですから、 日本で言うと30年くらい前か、 それくらいの所得にきていると思いますけれども、 それでももうみんな車を持ってしまうわけですね。

これは同じくバンコクで、 大変に排気ガスが出ている。 CO2はこういうふうに見えないんですが、 写真でCO2というのはないもんですから、 色の見えるものを使っているわけであります。 いずれにしても大変な排気ガスがありますし、 渋滞をすればするほど燃料効率が悪くなるので、 それだけたくさんのガスが出てくるというわけです。 これはCO2も出ますし、 このように浮遊粉塵、 あるいはさらに目に見えない一酸化炭素とかN0Xとか、 いろいろなものが出てくるわけです。

日本でいま議論になっているのは、 1990年というものをベースにしたときに2010年までにどれくらいのCO2の排出量を減らすかという議論がなされておりますけれども、 それ

 

 

 

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