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訳ですが、圧倒的にこの二酸化炭素の量が多いものですから、現在、主として問題にされているのは二酸化炭素であります。

その二酸化炭素の濃度が過去どのように推移してきたか、これはいろいろなグラフがあるのですが、私はこれが一番分かり易いかと思って持ってきました。これは、過去1,000年にわたってのCO2の濃度を表しているもので、ずっと280ppmという濃度でほぼ一定して推移しています。1800年以降からでしょうか、この280ppmというのがずっと上がってきて、現在360ppmというところまで上ってきています。このグラフはその1850年以降のところを少し拡大しているものですが、このように280ppmから360ppmに上昇して行くにつれてCO2の排出量が増加してきているということを表しています。

こういう状況に対して、これも多くの皆さんがご存知とは思いますが、最近新聞などでIPCCという略語が出てまいります。これは気候変動に関する政府間パネルという、世界のこの方面の学者が集まった研究組織ですが、それが1995年の末に第2回目のレポートを発表しています。そこでは基本的に地球温暖化というものは既に始まっている、起こっているのだということを結論づけています。

簡単に申しまして、地球温暖化が起こっていると結論づけたのには2つの理由があるとされています。1つは過去100年間を見た時に、地球の年平均気温が、これもいろいろ数字があるのですが、平均値で100年間に0.5℃既に上昇していると言います。100年間に0.5℃の上昇ということは通常の自然界で発生する現象としては非常に考えにくい大きい値であるということです。そういう気候の変動をコンピューターによるシミュレーションモデルで作って計算を行っています。それがいろいろと改良されてきたのですが、主だった色々なガスの中でも、硫酸関係の細かいパーティクルの硫酸ミストというものが大気中に分散しています。これも大気汚染の一種ですが、この硫酸ミストというのは逆に地球の温度を下げる、つまり冷却効果を持っている訳です。その冷却効果というものを勘案するとかなり数値的に合うようになってきたと書かれています。

そのように現実に気温が上がってきているのだということと、モデルの解析と結果とがよく合うようになってきたということで、温暖化というのは既に始まっているのだというふうに結論づけた訳です。

そのIPCCが将来の予測として出している数字も、いろいろ幅があるのですが、一般に通常言われていますのは、CO2濃度が現在は360ppmだと申し上げましたが、2100年にはおおよそ700ppmになるだろうと言われています。これはおおよそいまの世界人口が現在のトレンドで増加し、経済活動というものがほぼ同じように維持されていくという前提によります。そうしますとCO2濃度が700ppmまで上がって、気温は2度上がり、海面は50cm上がるという予測がされています。これ自体先ほど申したように、かなり幅のある数字で、色々なケースについてシミュレーションしている訳ですが、その中で、21世紀の中頃くらいまでにCO2の排出量を1990年のレベル(色々な議論の中で、1990年というのは一つの基準になっているようです)までに抑える、あるいは戻すということになれば、このCO2濃度は450〜500ppmくらいに、気温の上昇は1℃に抑えられると言われます。そういう意味で、このままの経済活動を続けて行くのではなく、21世紀の中頃に向けてCO2の排出を抑制して行かなければならないというのが、このIPCCのシナリオになっている訳です。

それでは、地球温暖化というものが進んだとして、一体どういう影響を受けるのだろうか、ということですが、この辺になると予測をするのはかなり難しい問題だろうと思いますが、世界的・地球的なレベルで言いますと、海面が50cm上昇するということは、例えば低開発国の太平洋の島国で

 

 

 

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