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WHOの統計からは(表参照)、今のDOTS導入の割合で行けば、将来的に患者は若干の減少をみるが、DOTSを全く導入しなければ患者は増え続けると予測される。一方、2020年までに100%導入すれば累積1億1千万人の患者が減少し、これを2000年までに実現できれば累積1億4500万人という大幅な減少が実現すると言うのである。つまり、できるだけ早い時期に、すべての国のすべての患者をDOTSを用いて治療することが、世界的に将来の結核患者の減少につながるのである。

この意味で、DOTSの浸透を図ることを重視した今回のワークショップはまさに時節にかなっていたと言える。

3)DOTSを採用した最新の結核対策を、結核対策担当者のレベルでは、西太平洋地域全体が足並みをそろえて実施できる土台を築くことができたことは意義深い。

各国の結核対策の背景はさまざまで、わが国でDOTSをそのまま採用できるものではないように、すぐに結果が現れるものとは言い難いかもしれない。

しかし、参加者は、このワークショップにおいて、具体的に今すぐ何をなすべきかを学び、同時に各国の担当者と交流を深めることができた。この経験を生かし、帰国後は地域全体に目を向けながら、自国での結核対策に臨んでいくと考えられる。今後、それぞれの国でDOTS実施の割合が増加し、将来的に西太平洋地域の患者の減少に結び付くことが期待できるだろう。

 

先般発行されたWHOのプレスリリース“Progress against TB stalled in Key Countries"の中で、WHOは各国の結核の現状を評価し、地球規模の対策を危機に晒している問題国とその反対に対策がうまく運んでいる国を挙げている。前者の16カ国の中には、西太平洋地域ではフィリピンが含まれている。

一方、結核を重要問題と認識する政府下で対策に進歩が見られる国、また、結核対策が成功している国として、それぞれベトナムとモンゴルを含む数カ国を挙げられている。本会がこの2カ国で2回にわたり実施してきた結核予防セミナーの効果がこの結果に貢献していると信じている。

 

 

 

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