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断言する人たちが主導権を握り、米国の同様の背景を持っている人たちの情報と観点でのみ米国を判断していたことから起こったのである。確かに、各国の政府代表団が自国の利益を主張し合うのは他の交渉ごとと同じかもしれないが、前を見て少しでもより良い形でまとめいこうという基本的な立場を持つ人たち同士であれば、より建設的な形での交渉ができるはずである。日本政府代表団は、そのような基本的な立場が逆を向いていたのである。21世紀の未来を見つめて、20世紀の過ちを少しでも改善してから新しい世紀を迎えたいと願う世界の意図が現れているといえる程の、人類史レベルでの人間性の良識が試される程の、重要な国際会議であるにもかかわらず、20世紀の世界と日本での過ちの部分を引きずる人たちが、日本政府代表団で主導権を握っていたのだから、混乱は、起こるべくして、起こったのである。何の飾りも無くなり、ありのままの姿を、世界にお見せしたのであった。

さて、そのゴア副大統領は、自国で厳しい攻撃を受けている。しかし、具体的には、減税案と環境対策を結びつけながらの長期的な戦略を考えているようである。二期目のクリントン大統領のこれからの願いは、アメリカ合衆国の大統領として歴史に残る実績を残して、民主党のゴア副大統領にその座を渡すことであるようだ。地球温暖化を現実の問題と考えているのはアメリカ人の75%、温暖化防止対策を講じるためにクリントン大統領の指導力に期待する人が過半数という。そして、米国のあの新しい文化の波を作り出したベトナム世代は約2千数百万人と言われる。彼らは、真黒の宇宙に浮かぶ青い美しい惑星が私たちの住むこの地球であると、視覚をとおして実際に認識し、衛星放送によって月の表面に初めて人間が降り立つのを感受性豊かな10代で見た経験をもち、60年代から70年代の人種差別反対運動、フェミニズム運動、冷戦批判等の社会運動の中で育ち、レーチエル・カーソンの「沈黙の春」の影響を受けてエコロジーや環境保全運動に目覚め、ベトナム戦争を直接・間接に経験した年代である。クリントン・ゴア正副大統領は、このような人たちに支えられて、彼らが正しいと考えることを進めていくだろう。

 

 

 

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