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中国語では「旅遊」(TOURING)、日本語では「観光」(SIGHT SEEING)ですが、シルクロードは只遊び回るTOURlNGより「観光」と言う言葉の本来の意味即ち、SEEING SIGHT 光り輝くものなり光景を見るという原義に沿って、その土地で一番いいものを見て勉強するのにまことに相応しい所だと思います。

日本人にとってシルクロードは非常に関心が高い地域でございます。それは一体どういうことかといいますと、まずは、シルクロードという世界が、日本の環境と非常に違っております。日本は島国でありますが、今回調査した中国・シルクロードの主要部新彊ウィグル自治区は、周りの多くを他の国と接触している内陸の辺境にあります。しかも非常に砂漠が多い。この砂漠の中には、いろんなものが隠されているではないかといったような夢とロマンをかき立てるというところに、日本人は非常にシルクロードに対して深い思いを持っているわけです。

新彊の旅行につきまして、調査団に参加して最近の状況を見聞しました。その時のお話では日本人の観光客は、毎年1万人以上来ること、しかしその大半はもう50〜60才以上の年配の人達で、あまり若い人はいないというお話でありました。

それはどういうことかなと考えておりましたが、やはりシルクロードを理解するには深い見識、特に歴史の知識が必要だが、今の若い人には、十分に備わっていない。

例えば、漢の時代に武帝が、張騫を西域に派遣した史実、あるいは法顕や玄奘がシルクロードを苦難の旅をした。また西の方では、アレキサンダー大王が東方遠征を行ったとか、そういう壮大で血沸き肉踊る歴史的な事実を知らないと感動も起きないわけで、そのために、関心が薄いのではないかなという風に考えます。

どのように知恵を絞って若い人達にもシルクロードの魅力をアピールしていくかといったことを、考え、研究することは、本日ここに居られる日本の旅行業界の方およびシルクロード諸国の観光担当者の方の重要な課題であると思います。そこで私としましては、今日は考古学者として奥深いシルクロードの魅力を探究して来た立場からその歴史的、文化的価値の捕え方、楽しみ方のヒントについてお話させていただき皆様のご参考になればと思っております。

シルクロードについて、何が一番意味があるかと言いますと、この地域が東の中国と西のローマ、当時の2大国が、お互いに非常に友好的に当時の国際的な文化交流、経済交流そして政治的交流をしていました。しかもそれがただ単に両大国だけでなくて、通過した地域に対してもいろんな大きな影響を与えております。それは現在、世界で非常に求められております国際協力というもので、その時期が人類の歴史の中で最も成功した華やかな時期でありました。

 

 

 

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