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空港、道路、ホテルの整備は進んでいるが、各地の道路標示や案内標識の整備は遅れている。これらの標示、標識の整備を急ぐとともに、海外旅行者の便宜のために英語標示の併記がなされることが望ましい。

【今後の方向】

西安、河西回廊及び新疆ウイグル地区に対する3度にわたる現地調査からは、シルクロードの主要観光地における空港、道路等の交通運輸施設の整備は目覚ましいものがあり、通信、宿泊、休憩、飲食等の施設の整備も、トイレ、案内標識、博物館、土産品、きめの細かいサービス、多様な民俗芸能の提供等今後の改善努力が待たれるものは少なからずあるものの、着々と進められている。

日本語ガイドの養成、エアコン付きのバスの導入、熱い湯の出る浴室、温かい食事の提供等サービス面も年々向上して来ている。

観光資源も既存のものに加えて、楡林窟、魏晋墓、河倉城、スバシ故城等の新たな歴史文化資源や七一氷河、カラクリ湖、湿原、オアシス、砂漠等の自然資源も存在し、エコツーリズム、トレッキング、ラフティング等の新しい観光魅力も導入されつつあり、シルクロード観光は多様化して行くものと思われる。

このような事態を踏まえて、従来限られた観光資源が広大な地域に散在するなかを苦労して見て回る、時間とお金に余裕がある人のみに許されたシルクロード旅行は、今後とも各種の努力を積み重ねることにより、通常の旅行者が団体で限られた日程の下でも周遊して回ることが可能なものとなりうる事が期待される。そして、これまで6月から10月の間に観光の可能な時期が限られていたのが、交通、宿泊施設等の整備や民宿、伝統行事の振興等の閑散期の出し物の工夫等により通年観光が可能な状況となり、海外旅行者の誘致、旅行・観光事業の経営等にとってより望ましい状況になる日も遠くないものと思われる。

中国国境を越えた中央アジア諸国などのシルクロード旅行については、奈良シルクロード・トラベル・フォーラムにおいて、現地情報が少ない、交通が不便、ビザ取得の困難、日本語ガイドの不在等の問題点が指摘されている。WTOシルクロード・フォーラム・西安において中国国家族游局のシルクロード開発に対する積極的姿勢が高く評価されたことから、中国におけるシルクロード旅行の発展が中央アジア諸国等にも波及して行くことが大いに期待される。

敦煌において、シルクロード学研究センター所長である樋口隆康氏が「観光振興と観光資源の保護」という演題の講演において、『観光と言うことでいろいろな国へ行ってそこの素晴らしいものをみるということ、学ぶということ、これが私たちの今後の生活を豊かにする。敦煌の素晴らしい優れたものを中国の人は勿論、日本のみならず世界の人々に見てもらいたい。折角のもの(古代遺跡)にふたをして誰にも見せない、あるいは地下に埋めてしまうということになりますと、私たちが今考えております観光というものをシャットアウトしてしまうということになって、その辺をどういうふうにお互いに共存させて行くかが問題になってくるかと思います』と述べている。現在推進されている「シルクロード等開発途上国地域の観光交流促進調査事業」は、かかる命題にも応えうるものでなければならないものと考える。

 

 

 

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