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大する日本人旅行者に対応するのに遜色のない体制が整えられつつある。昨年からガイドの能力、経験を踏まえたグレイド分けの制度が導入され、それに基づく給与差別も検討されるなどガイドの能力向上のための努力もなされている。しかし、旅行者のシルクロードにおける文物に対する理解を深め、旅の興趣を高めるためには、単に日本語が話せるだけでは不十分であり、歴史、文化、習俗等に関する豊富な知識を有するガイドの育成が望まれる。

観光資源は、莫高窟、兵馬俑、鳴砂山、月牙泉、嘉峪関関城、高昌故城、交河故城、火炎山、キジル千仏洞、香妃墓等既に旅行者に知られたもの以外に河倉城、楡林窟、魏晋墓、スバシ故城等新たに素晴らしい歴史文化資源が発掘、開発されつつあり、今後とも新たな資源が増加することが期待される。また、将来においては七一氷河、葡萄溝、オアシス、砂漠、カラクリ湖、湿原、珍しい動植物等の多様な自然資源も存在し、エコツーリズム、トレッキング、ラフティング、ハングライダー、グライダー等のスポーツ、駱駝旅行、クルーザー旅行等観光旅行の多様化も期待される。

中国旅行の最大の問題点の一つであるトイレは、ホテル、空港等では個室の扉付の水洗のものの導入が図られるなど改善の努力が窺われる。しかし、観光地、休憩所等において従前どおりの大部屋方式の悪臭漂う便所は相変わらず少なくなく、より一層の改善の努力が望まれる。

土産物は夜光杯、絨毯、ナイフ等シルクロードならではのものがあるものの、どこの観光地に行っても同工異曲の傾向があり、、デザイン、サイズ等も工夫の余地が少なくない。また、値段の表示がまちまちであり、買うための駆け引きも旅の楽しみと割り切れといわれても、適正価格や品質についても知りようがないのは問題である。旅游局推薦のモデル店舗や観光地毎の特色ある土産物の開発の努力が望まれる。

食物は、文字通り山海の珍味を御馳走になった。回族伝統の各種の麺、驢馬肉の料理、羊肉の料理、駱駝の掌、陽関近くで取れた魚、各種の麺、ナン、ヨーグルト等いかにもシルクロードならではというものも出され、特に羊肉の水煮は特有の臭みもなくとろけるようで絶品であった。しかし、子豚の丸焼き、しゃぶしゃぶ、しゃこの煮物などは豪華なものであっても他所から導入された料理も少なくなく、特に敦煌において刺し身が出て来たのは驚きであった。果物は梨、林檎、石榴、ハミ瓜、西瓜、無花果、林檎、梨等を賞味することができたが、新疆ウイグル地区で出されたものは出盛りの時期であったせいもあって絶品であった。

民俗芸能は、華清池において娘さんたちが練習していた春節の踊り、白塔山公園に置ける春節のために集まった各地の民俗芸能や少数民族の踊り、新疆ウイグル自治区におけるウイグル族の踊り等シルクロードの沿線における多様な少数民族の民俗芸能の一端を垣間見ることができた。今後はより多くの少数民族の踊りを発掘して観光の用に供する事により旅の興趣を高める工夫が望まれる。

博物館は、各地に存在するが、陝西省博物館、兵馬俑坑などは展示は整理されていて説明もきちんとしており、また、ブローシャー、絵葉書等もあり、一応の水準にあると言える。しかし、他の博物館は、折角の貴重な収納品も展示、説明とも貧弱であったり、照明が暗かったりで見学しにくく、ブローシャー、絵葉書も無いなど大幅な改善が必要な状況にある。シルクロードの歴史、文化を理解したうえで各地の観光資源を見学すれば興趣は著しく増すものと思われ、博物館をシルクロード観光のための旅行者に対するオリエンテーションセンターとして活用する方向での整備が望まれる。特に日本の無償援助で建設された敦煌石窟文化財保存研究センターのより一層の活用と各地にこれに習った施設の整備が望まれる。また、展示における説明の際最低限英語の併記が必要である。

 

 

 

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