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部の狭隘な道路を約8.1km進行した奥地に位置している。出火建物の南側は山間道に面し、北側は山沿いの傾斜地に建築された複雑な建物構造となっているため、以前から火災が発生した場合、防御活動が制限され、延焼拡大の危険性が高い建築物であった。

水利状況は、出火した建物の北西側350m付近に、防火水槽1基の他には、山間道と平行して流れる自然水利があるが、水量的には、ポンプ車1台が限界という状況であった。

 

4 活動の概要

午前0時21分、消防本部通信司令室で119番通報を受信。「火災第1出動指令」で、所轄分署及び隣接分署から、水槽付ポンプ車等4台が出動した。

出動途上、上空に火炎上昇等は確認できなかったが、旅館火災及び第2通報の状況等から延焼拡大の恐れ「大」と判断、本部指令室へ「火災第2出動」を要請し増隊を図るとともに、悪条件の水利事情のため「特命出動」による水槽車の出動も併せて要請した。

通報から12分後、最先着隊が現場到着時、出火棟3階の軒下部分から火炎が猛烈に噴出し、3階客室部分は、全面火災の様相を呈しており、火災は中期から最盛期へ移行する段階にあった。水利部署後、直ちに出火棟2階客室窓から屋内進入し、消火活動を開始すると同時に、逃げ遅れ者の有無の状況について情報収集を実施した。関係者からの避難状況報告で、宿泊客9人のうち1人が意識不明のまま従業員により救出され、その他の宿泊客8人は全員避難していることを確認し、消火活動を継続した。

指揮隊到着後、出火棟南側に指揮本部を設置、湯治場の渡り廊下部分に延焼阻止線を設定して、後着隊及び消防団隊と協力、挟撃戦術により湯治場への延焼は阻止した。しかし、北側傾斜地に立地する老朽化した木造の建物は燃焼速度が著しく速く、消防隊筒先要員の屋内進入は制限され、包囲戦術体形のもと必死の消火活動の甲斐もなく、火勢は衰える様子を見せなかった。

現場指揮者の筒先集中注水の下命に基づき出動した消防職・団員が一丸となっての消火活動の末、火勢制圧と延焼阻止に成功、鎮圧状態となった。

なお、表面燃焼は鎮圧されたものの、収容物からの内部燃焼が継続しているため堀り返し、排除活動を行い残火処理を実施した結果、約4時間を超える火災は午前4時39分ようやく鎮火した。

この火災で宿泊客1人が、一酸化炭素中毒死、消火活動により消防職員1人が軽傷、消防団員1人が中等傷の怪我を負った。

 

おわりに

本火災は、小規模分署が最先着隊として出動し、最大限の消防力を発揮するため、早期に第2出動要請、非常召集を行い消防力の強化を図り消火活動を実施したにも係わらず、不幸にも死傷者3人を出す災害となった

 

深夜長時間にわたる低温下での消防活動は、隊員の体力消耗も激しく疲労による集中力の低下を招くため、安全管理上消防隊員の交替について考慮する必要があり、消防職員の消火活動には限界があるため、多数の消防団員の指揮統制に係わる問題等今後の課題を残した。

また、傾斜地に立地している増改築を重ねた複雑な建物構造により、消火活動が制限され延焼が助長されたこと、水利状況が悪く水量不足による放水中断等の反省点を踏まえ、今後の警防活動に活かしていきたい。

(倉橋 信正)

 

救急・救助

スキー場における雪崩事故捜索活動

坂田郡消防本部(滋賀)

 

はじめに

坂田郡は滋賀県北部に位置し、岐阜・福井両県と隣接する古くからの交通の要衝で、現在でもJR東海道本線と北陸本線との分岐点である。県内唯一の新幹線駅、名神高速道路と北陸自動車道のインターを擁し、近畿・北陸・中部の大動脈が縦貫している。管内面積は約222k?uで、近畿最高峰の伊吹山や、低曲ながら登山者を魅了する霊仙山を拝し、伊吹・奥伊吹のゲレンデは、速く中国・四国地方のスキーヤーにも人気のスキーエリアである。

 

 

 

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