火災
山間部の老舗温泉旅館火災
弘前地区消防事務組合消防本部(青森)
はじめに
弘前市は「お城と桜とりんごの町」として知られ、みちのくの果てに約400年の歳月を刻んで栄えてきた城下町で、西には津軽の秀峰「岩木山」、東には八甲田連峰の山々を望み、その中心を貫いて流れる水清らかな岩木川は、日本一のりんごとおいしい米を実らせ広大な津軽平野を潤している。
消防体制は、弘前市を中心に1市3町4村で組織構成され、1本部・2署・8分署、消防職員268人で近年複雑多様化する各種災害に対応している。
ここに紹介する火災事例は、当市の南東に位置する碇ヶ関村で、藩政時代に津軽藩の関所が置かれ、四方を山々に囲まれた津軽の奥座敷として栄えてきた温泉郷であり、現場は山間部の傾斜地に立地する大規模温泉旅館で限られた水利の状況下で、4時間を超える消防活動を要し、死傷者3人を出した火災である。
1 火災の概要
(1) 出火日時 平成8年11月1日(金)
午前0時05分頃
(2) 発生場所 青森県南津軽郡碇ヶ関村大字
碇ヶ関字西碇ヶ関山 温泉旅館
(3) 覚知時間 午前0時21分
(4) 鎮火時間 午前4時39分
(5) 気象状況 天候 曇り
気温 5.1℃
湿度 73%
風向 南西
風速 0.3m/s
(6) 損害状況 旅館2棟全半焼
焼損面積1,692.03?u
損害額 59,605千円
(7) 死傷者 死 者 宿泊客 男性60才
中等傷 消防団員 男性41才
軽 傷 消防職員 男性23才
(8) 初期消火 な し
(9) 出動車両及び人員
第一出動 指揮車 1台 2人
タンク車 2台 7人
救急車 1台 3人
第二出動 ポンプ車 2台 7人
化学車 1台 3人
救急車 1台 3人
特命出動 水槽車 1台 3人
消防団 ポンプ車 5台 77人
計 14台 105人
2 建物の状況
出火した建物は、昭和28年山沿いの傾斜地に建築された、客室数95部屋を有する大規模宿泊施設で、当夜は9人が宿泊していた。
旅館部と湯治場が渡り廊下で棟続きとなっているが、消防法令上3棟として取り扱われている建築物である。
出火棟は、旅館部の宿泊棟で木造モルタル1部防火板張り亜鉛鉄板葺3階建、延面積2,191.69?uのうち1,073.27?uを半焼し、類焼棟の湯治場棟は、木造モルタル1部防火板張り亜鉛鉄板車3階建、延面積618.76?uを全焼し、類焼を免れた従業員管理棟は、木造モルタル亜鉛鉄板葺2階建、延面積640.63?uの3棟で構成され、全体の延面積は3,451.08?uである。
3 付近の状況
現場は、弘前市街地より国道7号線を秋田県大館市方向へ33km、所轄の分署より山間