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ワンポイント

消防職員のための法令用語解説

 

不利益処分(1)

 

1 不利益処分

 

行政手続法第3章は、「不利益処分」について定める。

第1節「通則」が、第12条から第14条

第2節「聴聞」が、第15条から第28条

第3節「弁明の機会の付与」が、第29条から第31条に規定されている。

不利益処分とは、「相手方に義務を課し、又は権利を制限する処分」である(行政手続法2条4号)。

 

2 不利益処分の基準

 

行政庁は、不利益処分をするかどうか、また、どのような不利益処分をするのかの基準(「処分基準」)設定し、これを公にしておくよう努めなければならない(行政手続法12条1項)。

これは、「法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」である。

法令で定めている基準は、法令で当然定めているので、ここの基準には含まれない。

処分基準を定め、公にしておくよう努めなければならないとして、努力義務にとどめてあるのは、不利益処分については、裁量が広く、個別的要素が強いために処分基準が定めにくいので、努力義務になっている。従って、合理的な理由がなく、基準作成を怠ることは許されない。

 

3 処分基準の具体化

 

処分基準を定めるにあたっては、できる限り、具体的なものとしなければならない(行政手続法12条2項)。

不利益処分は、裁量性、個別性が強いので、出来る限り具体化する必要がある。

法令の基準が、「具体的な処分」について、具体的に判断することが可能な程度まで詳細なものである場合には、あらためて処分基準を設定する必要はない。

 

4 不利益処分の理由の提示

 

行政庁は、不利益処分をするには、理由を示さなければならない(行政手続法14条1項)。

これは、?@ 処分の客観性(判断の慎重性、合理性)を担保するため。?A 名宛人に処分の理由を理解してもらう。?B 事後救済手続上の便宜に資するためである。

理由提示の内容は、?@ 不利益処分の根拠条項、?A 処分要件に該当する原因となる事実である。

緊急性のあるときは、理由を示さなくてもよい場合がある(同法14条1項但書)。災害対策基本法17条による災害復旧従事命令が、その例である。この場合には、処分後、相当の期間内に理由提示をしなければならない(同法14条2項)。

書面による処分をするときは、書面で、理由を示さなければならない(同法14条3項)。

全消会顧問弁護士 木下 健治

 

 

 

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