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のであるから、ちょっとした注意をおろそかにして火災などをひき起こさないようお互いに気をつけましょう。そして悔いのない人生を送りましょうという戒めの言葉であると私は思うのです。

 

1 火災の意義

「火災にというのは、消防組織法第1条や消防法第1条などにでてくる法令用語で、「火事とという言葉はいわば俗称なのです。

ところで、消防法などの法令には、火災とは何かについて定義規定が置かれていませんが、火災報告要領(平成6年4月21日消防災第100号消防庁長官通知)は、火災について実務上次のように定義しています。すなわち、火災とは、?@人の意図に反して発生し、若しくは拡大し、又は放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもののほか、?A人の意図に反して発生し、又は拡大した爆発現象も含まれるとしています。ここにいう爆発現象というのは、化学的変化による燃焼の1つの形態であり、急速に進行する化学反応によって多量のガスと熱を発生し、爆鳴、火炎及び破壊作用を伴う現象のことであるとされています。

なお、この火災の定義は、あくまでも消防行政上(実務上)の定義であって、学問上確立された定義ではありません。また、爆発現象が現実に火災に含まれるものとして運用されるようになったのは、平成7年1月1日以降のことです。

 

2 火災と消防法令上の義務及び責任

前項で消防行政上の火災の定義について説明しましたので、ここでは、このような火災に関連し、みなさんが消防法令上どのような義務が課され、また、どのような責任が負わされたかについて、みなさんと直接関連があると思われる事項に限定してごく簡単に説明しておきたいのですが、その前に、予備知識として消防法令上の義務と責任の意味について触れておきましょう。「消防法令上の義務」というのは、 一定の行為をするよう又はしないよう消防法令によって拘束を受けることをいい、また、「消防法令上の責任」というのは、消防法令上の義務を怠ったことによって消防法令上負わされる不利益、つまり、義務違反としての罰則を受忍することなのです。

 

(1) たき火・喫煙禁止区域における火気の制限(法第23条)

消防法第23条の規定によれば、「市町村長は、火災の警戒上特に必要があると認めるときは、期間を限って、 一定の区域内におけるたき火又は喫煙の制限をすることができる。」と定められており、「火災の警戒上特に必要がある」というのは、 一定の地域が特に火災を発生しやすい状態にある場合とか火災が発生したときに延焼拡大や多数の人々への損傷の危険が予想される状態にある場合を指します。たとえば、博覧会や神社・寺院などの祭礼等に際して多数の者が参集するような場合、道路工事等のため消防自動車が進入できない場合、断水等により水利が使用できない場合又はガス漏れにより火気を使用することによって爆発の危険がある場合などがこれにあたります。そして、このような状態にある場合には、市町村長によって一定の期間たき火・喫煙の制限措置がとられることになりますが、「たき火」というのは、火を使用するための本来の設備・器具を用いないで火を焚く形態一般を指しますから、このような形態で火を焚く限り、その目的のいかんを問わず、いずれも「たき火」に該当することになります。また、「制限」には、禁止のほかに時間的・場所的(部分的)制約又は方法の制約が含まれ、そのいずれを選択するかは、状況により市町村長の裁量によって決定されますが、禁止措置がとられるのが通例です。たき火・喫煙禁止区域の指定は、市町村の公報への掲載や指定区域への立札等の掲示によって公示されます。そうすると、みなさんには、その区域内において、所定の期間中たき火や喫煙を行ってはならないという消防法上の義務が生じ、その義務に違反してたき火や喫煙をすれば、消防法上の責任として罰則の適用を受け、20万円以下の罰金又は拘留に処せられることがあります(消防法第44条第13号)。

 

(2) 劇場・百貨店等の客席・売場等における喫

 

 

 

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