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予防広報は1年中継続してこそ、防火意識の高揚につながるものと認識している。また、災害時に的確な広報をすることが住民の不安を解消するものと認識している。

しかし、いざ災害が発生すると少ない職員では広報活動まで、手が回らず住民に不安感を募らせた。

管内でも災害の大きかった宮之城町、鶴田町では高齢化率が30%近くであり、お年寄りは不安と恐怖におびえていた。そのようななか地震直後に数件「消防車両で管内を巡回してほしい」、「消防車が近くを通ると安心する」等の意見が寄せられた。

住民の要望に応えるため、余震が発生したらその都度管内の調査を含めて車両広報を実施した。

また、4月中旬には地震関係の「防災ちらし」を発行し、地震時の心得10箇条及び家具の転倒防止。収納の工夫等を特集して、管内全世帯に配布した。

(2) 地震に関係する火災ゼロ

約1月半の間に震度5以上の地震が4回あったにもかかわらず、地震に関係する火災が1件も発生しなかったのが不幸中の幸いで、特筆すべきことであった。

地震が発生したら一番怖いのは「火災」だと言われているが、管内住民が「地震だ火を消せ」の地震時の心得を実践したことと、時間帯が良かったことが火災につながらなかったものと思われる。

これも、日頃の地道な広報活動の成果が現れたものと、消防機関としては今後の指導になお一層力がはいる。

(3) 各町の地震対応

被害の大きかった宮之城町、鶴田町は直ちに災害対策本部を設置して防災行政無線を活用し避難勧告、避難場所の広報及び出火防止など、各家庭での対応について繰り返し広報した。

また、地震発生後直ちに消防団員を全員招集し、地元住民の避難誘導、巡回広報及び災害調査を行った。さらに、避難所には昼夜を問わず消防団員を配備し、避難されたお年寄りたちの不安解消につとめた。

このように防災行政無線を有効活用し、地震発生のつど呼びかけたことや、消防団員の活躍で一部倒壊家屋や崖崩れ等が多数発生したにもかかわらず、地震に関係する救助出動はなく、救急出動要請は延べ7件であった。

 

2 常日頃の広報活動

(1) 防火クラブ員による防火広報

当消防組合管内の婦人防火クラブは5団体及び幼年消防クラブは4団体である。秋の火災予防運動週間の初日には婦人防火クラブ員と幼年消防クラブ員及び消防団員と合同で市街地を防火パレードして、防火啓蒙に努めている。また、出初式に参加し消防団員と分列行進をしたり、消防署の救助大会の応援にもかけつけたりして、広報活動に活躍している。

(2) 防火ポスター及び防火標語による広報

管内の小・中学生等から防火ポスター及び防火標語を募集し、審査・表彰を行いスーパーの店内に展示したり、あるいは防火広報誌等に活用し住民に防火を訴え、火災予防に一役かっている。今年度の防火標語の最優秀賞は小学校四年生の作品で、「火のしまつ 目をかけこえかけ 心がけ」が選ばれた。

(3) 小学校四年生に防火読本配布

小学校四年生は社会科の教科書の「安全な生活」のなかで「消防署のしくみ」について勉強をしている。この授業の役に立ててもらおうと、当消防本部では「私たちの町を守る消防」と題して防火読本を作成し、管内の小学校四年生全員に配布している。子供たちはもちろんのこと四年生の担任の先生方からも管内の消防行政が良く理解でき、自分たちの町の消防について関心が出てくると大好評である。

 

おわりに

今回の大地震を教訓にして、「安心して生活できる地域社会づくり」もさることながら、「災害に強い町づくりとを目指し消防団、防火クラブ関係者と協力し予防広報活動を通して地域住民に防火意識の高揚を図っていき、職員は一人ひとりが広報マンとして自覚し、災害の未然防止に役立つ広報活動を推進して行きたいと考えている。

(市野 惠二)

 

 

 

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