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作業を行う場合には、マスクの着用など健康に十分注意するとともに、危険な作業は差し控えるよう受け付け窓口などで指導を行った。

被災市町村は救護所を開設し、医師、看護婦、保健婦を派遣するとともに、巡回診療などを行った。

 

5 今後の課題

今回の活動における課題については、以下のようなことが考えられる。

災害時にはボランティア支援センターを被災地に速やかに開設し、被災地の多種多様な支援要請と、自分にできる活動が、どこに、どのようにあるのかわからないボランティアとを結び付けるなど、ボランティアが円滑に活動できる体制を早急に整える必要がある。

現地ボランティア本部の運営の主体としては、ボランティアと行政とがあるがそれぞれ一長一短があり、今回の教訓を活かし、今後十分に検討していく必要がある。

ボランティア主導については、迅速で機動的な受け入れ活動が行える反面、公平性が確保されにくく、活動時においての事故発生などの際、責任の所在や安全性の面での問題が生じる。

一方、行政主導については、ボランティア希望者が登録し安全に活動を行うことができる反面、行政担当者を数多く確保できない等、大量のボランティアが駆け付けた時には対応できない懸念がある。

市町村においては、ボランティアの受け付け・オリエンテーション等を行う支援センターを速やかに開設するため、ボランティアを受け入れやすい地理的条件の良い空間を予め想定しておき、被災地の要請とボランティアとの要望を速やかに調整するため、専門的な知識を有するボランティアリーダーやコーディネーターの確保が必要である。

今回の災常においても、阪神・淡路大震災と同様にボランティア活動の期間が長期に及ぶことになったが、各種団体が、ボランティア本部に運営スタッフを派遣したり、平常時の活動ネットワークを活用して支援物資を提供したりするなど、組織的かつ効果的な活動を継続的に展開した。今後もこのような支援団体との連携を拡充していくことが必要である。

ボランティア支援センターを長期間にわたり運営していくには、ボランティアリーダーやコーディネーターと連携を図りながら、特殊な状況下での機動性のある活動ができる多くのスタッフの確保など、支援体制づくりが必要となる。

ボランティア活動を支えるには、活動資材や食料等、活動資金が必要であり、ボランティア自身にその調整を全て頼ることはできない。

ボランティア団体やボランティア活動に理解ある団体、社会福祉協議会などボランティア活動を推進する団体、さらには市町村や県などが、災害時において協力関係ができるよう、平常時から災害時を想定して、各分野での専門ボランティアを確保し、団体間においても情報交換するなど、ネットワークづくりに努めていく必要がある。

このように、地域住民自らが災害を乗り切る努力は極めて重要であり、平常時から地域外からのボランティアとともに、活動することに対する環境づくりや地域住民の助け合う意識を醸成することが重要である。

今回の重油事故災害においては、多彩な個人や団体、企業等がそれぞれの考えや理念に基づき、それぞれの行動スタイルでボランティア活動に参加した。

こうした気運を一過性のものに終わらせることなく、将来にわたって活かしていくためには、各種団体が取り組んだ実態を紹介するなど、災害時におけるボランティア活動の意義や役割、重要性などについて、地域はもとより企業等各種団体に対しても啓発していく必要がある。

 

 

 

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