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? 高粘度油の回収に対する各国の考え方

ア イギリスでは早期対応を重視しており、航空機による油処理剤散布を高く評価している。高粘度対応策として特別な対応は考えていないが、いろいろなスキマーを備えて、対応可能な機種を選択して対応することになっている。

イ ノルウェーでは、機械的回収を前提として油防除活動を行っているが、高粘度油を対象とした特別の対応は考えていない。

ウ スウェーデンでは、高粘度油に対し小型回収船にグラブバケットによる回収や、金網(柄杓やたも網状のもの)による人力回収を考えている。

なお、大型、中型の回収船にもクレーンが装備されており、その先端に取り付けるグラブバケットも準備されている。

(6) その他

各国における調査の過程において、各国担当者の発言で印象に残った事項を参考までに列挙する。

1) イギリスでコーヒブレイクの時間に、年に何回かは、50トンの油(その都度油種は異なる)を海上に流し、油処理剤の実証試験及びリモートセンシングの訓練を実施しているとの話を聞いて、その後油はどうするのかと尋ねたところ、飲んでいたミルク入りのコーヒーを指さして、「油処理剤を散布してこの色になればノープロブレム」とのことであった。(OSRLにて)

2) 油防除資機材の性能限界をどのようにして、判断するのかと質問したところ、「現場で使ってみなければわからない、災害現場は毎回状況が異なる、経験を蓄積して、それぞれの機械の限界を見極め、次の災害に適切な機械を選択する。もちろんそのためには現場の正確な情報が不可欠である。」との回答であった。(SFTにて)

3) 油防除作業の中止する目安を質問したところ、「作業に従事している人間の安全が目安である。」さらに、具体的な数字を質問したところ、「スキマーによる回収では約1mの波高、オイルフェンスの展張は約1.5mの波高である。波高が1.5mを越えれば、オイルフェンスは効果が期待できない、効果のないことをしなくてもやがて海岸に流れ着くのであるから、それから回収すればよい。」とのことであった。(スウェーデンコーストガード)

4) 倉庫に積まれた網でできた柄杓状のものを見ていると、担当官が「高粘度の油にはこれが一番役に立つ、もっとも効果的な資機材です。」と説明した。(スウェーデンコーストガード)

5) 油の回収目標である5,000トンの時間的な目標値を質問したところ、「そんなものは無い、どのような気象、海象か分からない。回収の効率は災害時の状況に大きく影響されるのでそのような目標は意味がない。」とのことであった。(スウェーデンコーストガード)

6) プレゼンテーションの中で、「ゴルフをするときに、一打、一打状況を判断してクラブを選ぶだろ、油防除も同じだよ、この機械があれば万全というものなど無い。その時々の状況を判断して、適切な資機材を選ぶことが重要であり、その経験を蓄積することが必要である。」(BOSCAチェアマン)

7) 機械の性能は波長や波高だけの条件で評価はできるものでない、もっと沢山のファクターが絡み合っている。特に油をどれだけ集められるかによって、ポンプの性能をどれだけ引き出せるかが決まる。要するにヒューマンファクターが大きいので、人間の練度を高めることも重要である。

8) 毒性について説明があった後、薬剤の環境に与える長期的な影響について、どのような評価を与えているか質問したところ、「環境(生態系など)に与える評価は大切な問題である、調査研究する必要性は十分ある。しかし、その答えがでるのは10年、20年後である。今の油汚染に対しては今の基準で対処するしかない。処理剤を散布した後の環境調査は継続して行う必要があるだろう。」との回答であった。

 

 

 

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