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CT検査を行ったら,腸腰筋というところに膿瘍をつくっていたのです。そこに針を刺して,内部の液を採って抗酸菌染色を行ったら陽性であり,結核と考えて,結核の治療薬を4種類使って治療を始めたのです。退院したのですが,その後なかなか症状がよくならないために再入院しました。次に神経症状が出て,頭のCTを撮ったところ,このように脳内に腫瘤性の変化があったのです。この人もトキソプラズマ脳症の合併もあるかと疑って,トキソプラズマの治療をしたのですが,一向によくならない。そうこうしているうちに,菌の培養検査の結果が判明し,結核菌陽性で,その菌は各種の主要な抗結核薬に対して耐性(すなわち多剤耐性結核菌)であったのです。その時点から二次抗結核薬を始めたのですが,残念ながら回復せずに亡くなりました。ニューヨークでは,そういった多剤耐性結核菌の感染が増加してきており,重要な問題になっています。

これは31歳の男性で(写真略),以前に肺にアスペルギウス症という真菌の感染を起こしたことがある人ですが,この人はいままで何回も細菌性の肺炎を繰り返しています。今回も肺炎で入院してきました。よく見ると斑状陰影が多発しています。痰からインフルエンザ桿菌が検出され,抗生物質で治療してよくなりました。私がいるときに,もう一度この人が肺炎で入院してきましたが,それもまたよくなりました。繰り返す細菌性肺炎もAIDSの症例定義の一つです。CD4数は9で非常に低いのですが,肺炎が治るとまた元気になって普通通りの生活をしているわけです。

この患者は男性同性愛者で,半年以上前からの慢性の下痢,その後発熱や息切れなどの症状で入院したわけです。この患者は血液培養をとったらサルモネラ菌が出ました。腸炎を起こすタイプのサルモネラ菌が血液培養と痰からも検出されました。ですからサルモネラの菌血症と肺炎

 

 

 

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