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です。AIDS患者の全経過を通して75〜85%の人がカリニ肺炎を合併するといわれています。AIDSの初発症状として以前は6割くらいの人にカリニ肺炎を合併したわけですが,いまはST合剤などの予防的治療が進歩,普及して,初発症状としてカリニ肺炎は1994年の段階で30%になりました。CD4が200未満になるとST合剤などによる予防的治療を行いますが,それが非常に有効なわけです。

そのほか合併症として多いのはカンジダ食道炎やサイトメガロウイルスによる網膜炎や全身性の感染症,末期ではAIDS脳症が40〜70%,それから進行すると播種性非定型抗酸菌症(Mycobacterium auium complex)が30〜40%の人に見られます。

 

11.AIDS患者の合併感染症の治療と予防

カリニ肺炎に対してはST合剤という薬がよく使われて,これによって3週間治療を行って8割の人は軽快します。それが副作用のために使えない場合はペンタミジンの静注を使います。治療したあとに予防的な維持療法をしないと高率に再発を起こしますので,治ったあともST合剤を少量続けてもらって再発予防をするわけです。またCD4が200を切ると発症する前からこれを予防するための投薬を行います。

トキソプラズマ脳症も治療できます。これも一生にわたる治療が必要です。

カンジダ食道炎も治療ができます。フルコナゾール,イトラコナゾール,アンフォテリシンBなどを使うとよくなります。維持療法としてフルコナゾールなどを生涯続ける必要があるわけです。

クリプトコッカス髄膜炎はAIDSで一番多い髄膜炎です。クリプトコッカスという真菌の一種が起こす疾患で,これにはアンフォテリシンBが効きます。あるいはフルコナゾールがよく効く場合もあります。

 

 

 

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