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後者の場合は現在堆積しつつある各種の堆積物の性質と比較することにより,過去の堆積物の環境を推定するという方法である。堆積物は海,川,湖等に堆積する場合がふつうであるが,そのうち海洋に堆積する場合が圧倒的に多い。そこで,古環境を推定するには現在の海洋環境を研究する必要がある。最近の海洋環境が急激に変化しているとすれば,それは古環境を推定する基本的根拠が崩れてしまうことになるので,大変由々しき問題である。

 

1. 化石からの古環境の推定例

どんな化石からもなんらかの古環境は推定できるのだが,ここでは浜名湖の古環境の変遷について行った研究例について述べる。

浜名湖の湖底や周辺の数点(浜名湖の水面とあまり落差のない現在田んぼになっている所)でボーリングし,コアー中の化石,特に有孔虫やオストラコーダを分析すると,過去浜名湖は何度も淡水湖になったり,汽水湖になったりしていることがわかった。これは,淡水,汽水,海水に棲む有孔虫やオストラコーダは各々異なっており,また水深や水温ごとに生息する種類も異なることから推定できる。ある地点で言えば,その地点が陸上になったり湖水になったり,その湖水も海洋と隔たった湖であったり,海水が出入りする湖であったりという環境の変化が,その地点として編めるのである。

 

2. 堆積物からの古環境の推定

多くの堆積物は水によって運ばれる。浸食されたものが河川を通って海や湖へ運搬されるのだが,その時いろいろな物理的作用を受ける。まず,侵食作用であるが,これは河川水が川底や河岸を削ることを考える人が多いが,実際にはその量は大変小さく,浸食作用としての営力の大部分は地すべり,山くずれ,落石等の自然災害に連がる現象により侵食されるものである。これらが運搬されていくのだが,運搬営力についても,平常時に運搬されるのは細粒子のもののみでその量は限られているが,洪水時に運搬されるものはより粗粒のものまで,また大量に運搬される。さらに,土石流として運搬されると平常時には想像できないような巨礫さえ運搬してしまう力を持っている。当然これらの違いにより,堆積物の粒度,円磨度,堆積構造は異なってくる。

河川環境を推定できる方法をあげてみると,インブリケート構造がある。これは,現在の地形と全く異なった地形を示していた時代の堆積物が,どこからどのような川で運搬されてきたかを推定するものである。

 

 

 

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