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1961年から90年までに、タイの経済は7.6%の成長をみ、また、経常収支の赤字は対GDP比で3.2%でありました。90年代の平均成長率は8.6%であり、また、経常収支の赤字は6%に上昇しました。支出面でありますが、世帯消費は、61年から90年までが72%から77%、90年代が62%から64%でありました。投資でありますが、最初の時期には26%から30%でありましたが、後の時期では40%から43%に上昇しました。貯蓄・投資ギャップは2%から8%まであり、90年代のインフレは4%から6%でありました。

1961年には、タイの全国土面積の64%が森林地域でありましたが、96年には26%と大きく減少しました。質の低下した農地、水源流、あるいは生態系的な多様性の喪失も増えております。また、工業発展の結果として、都市部の汚染は経済的な福祉を悪化させただけでなく、社会的な問題を拡大しました。

開発の持続可能性についてでありますが、どのような社会でも、発展と変革は、社会の内外から創出された経済的な要素と社会的な要素の相互作用がもたらすものであります。自然あるいは生態系を考えますと、自然の原因と影響は、人間と自然の相互作用であります。人間がもしすべての事物の中心であるとするならば、人間を取り巻くすべてのものは人間の環境であります。このことからすれば、環境は経済的な要素と社会的な要素の二つに大きく分類することができます。

経済的な環境でありますが、例えば、生産、消費、投資、海外との取引といった経済取引を通じる経済活動の要素投入および要素産出によって構成されております。技術も、また、経済的な投入として分類されます。1993年の国連SNAによりますと、自然のサービスは、投入および産出として、経済の領域に含まれております。

社会的な環境でありますが、例えば、社会構造、制度、歴史、政治、人口、民族、宗教、文化といった社会・政治的な要素がこのなかに含まれます。社会経済的な発展の持続可能性は、この経済的な要素と社会的な要素の均衡のとれた相互作用に依存しております。「均衡のとれた相互作用」とは、天然資源を保護しつつ、財およびサービスを提供するに際して、経済的な要素と社会的な要素とを調和させることを意味しております。

「環境資源勘定」(ENRA:Environmental and Natural Resources Accounting System)をSEEA(「環境・経済統合勘定体系」:System of Integrated Environmental and Economic Accounting)および「サテライト勘定」と関連させつつ理解するためには、SNAを中核の勘定とする経済計算とその変化、さらに基礎的な統計について簡単に論及する必要があります。

SNAは、マクロ経済計算、貸借対照表および国際的に合意された概念、定義、取り決め、分類、計算規則に基づく表を、一貫した、統合されたフレームワークに組み立てたものであります。SNAは、一定の期間中に生起する様々のタイプの経済活動と結びつけられ、相互に関連する一連の勘定と期首および期末に保有される資産と負債の価値を記録する貸借対照表で構成されております。SNAは、経済分析、意思決定、そして政策決定のために作成され、提供されるものであります。

 

 

 

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