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visibility)の程度と何らか結びついたものであります。すなわち、それらの問題や課題についての統計が、どれだけの量、どれだけの頻度で利用できるかということによって決まるわけであります。(注:統計的な可視性のあるものが問題や課題として捕捉されるということ)

性間の格差、所得の不平等、そして社会の階層化は、多分、20世紀の第4四半期までは、統計的に可視的でなかった課題の例であるといえるでありましょう。

情報技術によって計算機の能力が一層利用し易いものとなり、また、比較的安価になった現在、社会と経済における格差や変動の詳細に焦点を当てないという理由はなくなっております。

この論文では、選定された特別な課題における格差を比較するに際して統計のもつ役割と、この仕事を遂行する場合に直面する諸問題について論じたいと思います。この論述のために、私は、最初の部分で、「極東オーストララシア年報」を主要な材料として、この地域に関する調査のことを簡潔にお話しいたします。そのあと、フイリピンにおける状況についてお話をし、また比較を行い、つづいて、概念や方法論に関連のあるデータ上の課題のいくつかについて取り上げたいと思います。(注:オーストララシアは、オーストラリア、ニュージーランドおよび近隣諸島)

所得、雇用および貧困についてでありますが、まず、1.1(注:論文の見出しナンバー、以下同じ)であります。開発の概念を経済的なパフォーマンスの概念を越えて拡大し、社会のニーズや希望を開発の過程に密接に組み込まれたものとして考える試みがなされるようになったのは、ごく最近のことであります。同様に、国民内部の不平等の範囲や性格について分析する試みがなされるようになったのも、ごく最近のことであります。下の表(137頁)に描かれた1人当り所得の計数は、諸国間の富裕度の相対的な水準について相当正確な概観を与えるものでありますが、地域内の国々のうち最も発展の遅れた国々に発生している極めて大きな所得の不平等を明示するものではありません。貧困水準に生活する人口の比率の推計は大きく相違し、どのような測定方法がとられても、結果は不安定であります。

1.2に進みます。飢餓に次いで、失業は、先進諸国のような福祉と社会的支援のメカニズムをもたない社会においては、貧困についての最終的な測定方法であります。雇用されているのか、雇用されていないのかの伝統的な概念は、農村地域において、親族同志の結びつき、多くの不完全就業、農業の季節性が通常であり、また、都市地域において、就労日または就労週の継続の概念が十分に定義されていないといった具合の、アジアの農村あるいは都市については、ほとんど意味をもちません。公式の調査は、しばしば失業の程度を控え目に出すことになります。正確な比率が何%であろうとも、人口の大部分が国の成長に貢献できていないことは明白な事実であります。この数は、多分、農村地域においてよりも都市地域においてより高く、高齢者についてよりも若年者についてより高く、そして、教育水準に応じて増加し、また、女性と比較して男性において増加する傾向があると思われます。

アジア太平洋地域のすべての国々は、日本、シンガポール、香港、オーストラリア、ニュージラ

 

 

 

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