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おりまして、生産物の種類が少なく、予算上の問題を抱え、そして輸出収入を生み出す産業を欠いております。地域内の他のいくつかの発展途上国の場合は、地理的なハンディによりまして、世界の他の国々との交通運輸コストがかさみ、問題をもっと大きくしている状況があります。

過去30年以上にわたりまして、アジア太平洋諸国の経済は、全体的に非常によい実績を示しておりまして、世界の経済拡大の活動的なセンターとなっておりました。アジア太平洋地域の興隆は、1960年代初頭に日本が急速な進展を遂げ、工業先進国のステータスを得たところに遡ります。その後、この地域は、いくつかの基本的な、また、大幅な経済変革を経験し、そして新たな経済拡張の時代を迎えました。これは、経済成長の点で、米国、EC、その他の国々をしのぐものでありました。日本の国内生産は年率10%を越える成長率を示し、1970年代の外因性の経済的混乱をも成功裡に克服しました。日本に続きまして、「4匹の虎」が台頭いたしまして、その経済成長のペースは日本のそれを越えるものでありました。その他の東南アジア諸国は、「4匹の虎」のすぐ後から付いてきております。中国も、20年前に経済を開放しまして、急速な経済拡大を経験しております。

しばしば、急速な経済成長が持続可能なものかどうか、という疑問が出されます。生産プロセスがグローバル化されている時代に、そして専門能力や財およびサービス、そして金融資源のより大きなマーケット・シェアを得ようと激しい競争が行われているなかで、重要な問題は、その結果として生じる経済成長がうまくバランスがとれているのか、また、健全な基盤によっているのか、ということであります。最近の東南アジアにおける通貨と金融の混乱は、多くのことを教えてくれる一事例であります。

東南アジア地域は、かつてその驚異的な成長と繁栄の故に賞賛された地域でありますが、それが突然あたかも経済、社会、環境面でどん底に落ちたかのような状況にあります。通貨や金融の混乱は、多額の債務を抱え、債務の返済に窮する多くの会社に大きな打撃を与えております。また、金融機関は、海外から多額の借入れをし、そしていまや業績の悪くなっている部門に信用を供与してきました。また、東南アジア諸国から大幅な資金の引き上げが海外投資家により行われ、これに追い打ちをかけられて株式市場は弱気の心理となっております。株価の暴落は世界的に波及して、この地域の成長戦略の持続可能性について疑問が投げかけられております。

同時に、東南アジア地域は、環境上の問題においても世界の注目を浴びております。森林の火災による灰色の煙害が約2000平方マイルにわたり、4カ国の7000万人に影響を与えました。高層ビルは煙にかくれ、学校、空港が閉鎖され、何千人もの人々が呼吸器系の障害で病院や診療所に行きました。

東南アジアのこのような厳しい経験によりまして、弱い基盤、つまり、熟練労働の不足やまた企業の過剰債務、そして銀行による悪しき融資慣行、不動産価格の暴騰と建てすぎ、人為的に維持された為替レート、の上での急激な経済成長は、経済を不安定にし乱高下させることに人々は気づき始めました。さらに、このように驚異的な成長率は、天然資源の枯渇、都市の住宅過密による大気

 

 

 

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