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基調講演「21世紀のアジア太平洋地域の持続的経済発展と統計」

 

国連アジア太平洋統計研修所

所長 ラウ・カク・エン

 

[要  旨]

相互に関連のある三つの分野に焦点を当てる。はじめに、地域の急激な経済拡大の持続性に疑問を投じたごく最近の幾つかの出来事を含めて、アジア太平洋地域の成長について見直しをする。次ぎに、地域諸国におけるこれからのデータ需要について、統計の方法論、分類体系及びデータ基準に関する世界的レベルでの最近の状況に照らして評価する。最後に、統計職員の研修の重要性と国連アジア太平洋統計研修所の役割について説明する。 この数十年間において、アジア太平洋の経済は全体として力強さを示し、うまく成長してきた。しかし、そのような急激な成長が持続するのかという疑問が生じている。生産過程のグローバル化を前提として、最も重要な問題は、国間の競争が激化しており、結果として生じる経済成長はうまくバランスがとれているのか、健全な基盤によっているのかということである。最近の東南アジアにおける厳しい経験は、弱い基盤の上における急激な経済成長は、不安定ではかないものであることを説明している。効果的な政策形成のためには、社会経済の成長についての総合的な理解、社会・公平・それに環境問題を取り込んだ発展に関する幅広い物差しが必要である。このような下で、データの測定及び集計に関する問題は多面的であり、特に、経済以外の側面において新たに出現している分野がそうである。また地域諸国におけるうわべ指向の成長戦略も、国内経済の世界経済との相互依存性を高めており、それは二つの重要な派生する問題を持っている。一つは、ビジネス活動のグローバル化が、しばしば行政記録から作成するような伝統的な統計の源を無くすような規制緩和によって生じていることである。二つ目は、貿易や資本の流れを通じたより国際的なリンケージが、新規のそして広範囲に及ぶデータ需要を作り出していることである。

しかしながら、各国の統計発展のレベルは非常に異なっており、地域を通じて、データの信頼性が非常に違っている。ほとんどの発展途上国において、統計のインフラストラクチュアが十分でない。関係のデータは良い政策や意思決定のために欠かせないものであり、また、政府はまだ統計作成に責任を持っているので、今後においても統計のインフラストラクチュアの開発及び維持は政府の主要機能である。したがって、アジア太平洋地域の発展途上国は、その統計システムの開発を促進する緊急の必要がある。これに関して、マクロ経済活動及び政策の透明性、信頼があり、かつ時宜を得たデータの市場の利用者に対する提供が重要である。統計の現時点での比較性、空間的な比較性を高めるため、国レベルの統計家は、それぞれの統計システムの中で統計の改善及び調和を図るとともに、共通概念、カバレッジ、分類及び定義を強調する1993年SNAのような国際的に採

 

 

 

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