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台湾映画祭 資料集−台湾映画の昨日・今日・明日−

 事業名 台湾映画祭の開催
 団体名 現代演劇協会 注目度注目度5


 

★喜劇凸凹コンビ、そして李行も若かった

 

台湾語映画の大ブームが降って湧いたように出現。地元の映画人はこぞって台湾語映画の製作に走り、一方で国語の映画はわずかしか撮られていなかった。台湾語映画は圧倒的に人材が不足しており、李行のような台湾語のできない、しかも監督経験さえない人にも、お鉢が回ってきたのだった。

そのデビュー作は『王哥柳哥遊台湾』というもの(上下二部に分けて公開された)。デブの王哥(ワンゴー)とヤセててチビの柳哥(リウゴー)のコンビの台湾漫遊記。言わば台湾版「ローレル&ハーディ」、台湾版「弥次喜多道中記」。これが滅法おもしろい。

確かにテーマや作りの荘厳さを言えば、後の国語映画時代には敵わない。でも映画自体にみなぎる自由闊達さ、スピード感、ギャグ・センスの秀逸さは、テーマの下らなさや多少粗製濫造気味だという事実なんか、すっかり吹き飛ばしてしまう。李行の国語映画時代が念入りに作りこまれたCDだとすれば、この台湾語映画時代は、少人数のバンドのライブ演奏という趣。実際、当時の役者たちは、極端にラフに書かれた脚本を前に、監督と一緒にその場でギャグを考えながら出演。しかも台北近郊の旅館に泊まって、その周囲で撮られている映画も掛け持ちしながら、という状況だったらい。

靴磨きの王哥、三輪車夫の柳哥。台北の同じ一角に住む仲良しのこの二人が、ある日街角で占い師に将来を占ってもらったところ、王哥は3日以内に大儲けできると出、柳哥はあと44日で死ぬ運命にあると出る。その直後、なるほど王哥はクジに大当たり。あとはもうヤケっぱち。二人は台湾見物の旅に出るのだが、そこで様々な騒動に巻き込まれて……、という内容だ。たしかに、テーマも考えぬかれた構成もあったものじゃあない。それでも、これは李行の最も素晴らい作品の一本になっている(もっともこの作品には共同監督として方霞、田豐のふたりもいたことは付け加えておくべきだろう)。発想としては演出上の手抜きのためだったのだろう場面――たとえばカメラは不動なまま、そのフレームの外でおかしな騒動が発生し、役者たちは時たまフレーム内を横切ってはまた画面の外に消えていくという画面外空間の使い方―までが、この映画の、その後の李行映画にはむしろ見られなくなってしまった美点として輝いている。

この作品で大いにウケた李行は、その後も同じ役者たち―李冠章、矮仔財―を使って『王哥柳哥』ものを撮りつづける(事実彼の台湾語時代の映画は大部分がこの二人主演だ)。『王哥柳哥好過年』『王哥柳哥過五関斬六将』、そしてタイトルは異なるが『凸哥凹哥』……。『王哥柳哥』と言えば李行、『王哥柳哥』と言えば李冠章、矮仔財という時代がやってきた。そして李行は国語映画に移行する。その第一作『我らの隣人』に出ているデブの男。あれが王哥こと李冠章だ。 (暉峻創三)

 

★「台湾ええい我の若き日々」 その2

その男、王哥柳哥

 

『王哥柳哥』ものが大ウケし、李冠章と言えば王哥ということになってしまった太っちょ男優の彼。そして矮仔財と言えば柳哥ということになってしまったヤセてて小さい彼。だが事態はいささか複雑な様相を呈してくる。

王哥が出てくりゃ柳哥も出てくる。それが通り相場となる中で、李行の国語映画第一作『我らの隣人』の主演は王哥、ではもはやなかった李冠章一人。台湾語映画『王哥柳哥』シリーズが人気を呼んでしまった彼だが、実のところは、李行同様大陸中国生まれの大陸中国育ち。台湾語なんて喋れなかったのだ(だから『王哥柳哥』の王哥役の声は別人が吹き替えていた)。片や矮仔財の方は台湾生まれで、基本的に台湾語映画役者。だから国語時代の李行の映画に、もはや出番は無かった。このいかにも凸凹でぴったりの二人だが、彼らが映画でコンビを組まされる以前も以後も、映画のなか以外の場所ではけっして、たとえば漫才コンビのようなコンビを組んだりしなかったのも、当然の理なのだ。

ところで李行が李冠章を主役にしたのも、この『我らの隣人』が最後。その後は葛香亭ら国語映画スターが取って代わっていく。これには一つの理由があった。太ったコメディ役者としてスタートした李冠章だが、彼はどちらかというと監督指向。実際遅くとも59年には監督作を作っており、後年になるほど監督業を本業にしていく。柳哥こと矮仔財は困った。『王哥柳哥』ものでもっと儲けたかった映画会社も困った。

そこに出てきたのが王哥である。この王哥は、あの王哥(李冠章)とは違う王哥。役名ではなく芸名そのものが王哥なのだ。そして体格だけはあの王哥にそっくりだったのだ。こうして矮仔財はこの王哥と組んで、またまたデブヤセ・コンビを復活。『吹牛大王』『錦上添花』などの作品で共演していった。

そんなイカサマめいたことが可能なら俺も、というわけだろうか。そこに今度は柳哥が出てくる。この柳哥もあの柳哥(矮仔財)とは違う柳哥。芸名自体が柳哥。ついには『王哥柳哥遊地府』なる『王哥柳哥』ものまで登場。そこには李冠章も矮仔財も出ていない。出ているのは王哥と柳哥だった。

こうした事態の推移を苦々しく感じていたのだろうか。その間、監督としての李冠章も負けてはいなかった。オリジナル・キャストである自分と矮仔財のコンビで自ら『王哥柳哥』ものを監督しているからだ。そのタイトルは『王哥柳哥007』(!)。世界をあのボンド・シリーズが制覇しつつあった67年の話である。彼は他にも『百子千孫』なる作品も撮っている。その主演者リストはこうなっている。王哥、柳哥、李冠章、矮仔財、と。 (暉峻創三)

 

 

 

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更新日: 2020年7月4日

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