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5) アプローチ方法の検討

 

以上の分析より、A群(高消極度・社会的距離大)とB群(高消極度・社会的距離小)、そして、D群(低消極度・社会的距離小・援助行動なし)とE群(低消極度・社会的距離小・援助行動あり)が概ね同じような傾向をみせていたので、以下、A群およびB群(以下、AB群)と、D群およびE群(以下、DE群)の大きく2つの対象を想定して検討を加える。なお、C群は他の4群に比べると以上の分析で明確な傾向をみせなかったこと、および、対象者数が少ないことから、以下の検討では取り上げない。

 

a 「AB群」へのアプローチ

?基本的考え方

この群は、精神障害者に対する否定的イメージをもっている人々であり、それを肯定的イメージに変容するようなアプローチを行なうことが考えられる。すなわち、DE群に近づくアプローチを考えるということである。ただし、年齢別に考えると、比較的高年層が多くいる群であり、その層に対しては、イメージを変容するアプローチが可能であるかは十分な検討が必要であると思われる。

?具体的アプローチの方向

具体的アプローチの一つの方向は、DE群の人が持っているような、精神障害者に対するイメージ(肯定、否定以外の)をAB群の人にも持ってもらう方策であり、「気を使う」「正直」「やさしい」「敏感」などのイメージである(これらのイメージを伝える方法には十分留意する必要はあるが)。同様な考え方で、精神障害(精神分裂病)の原因は、「個人的要因」だけでなく、「環境的要因」が大きな役割を果たしていることや、精神分裂病の知識としての正しい理解を伝えることが重要と考えられる。問13のようなメッセージ(刑事事件の比率など)は、このAB群では「信じられない」という割合が多く、あまり有効でない可能性がある。

 

b 「DE群」へのアプローチ

?基本的考え方

この群は、精神障害者に対して既に肯定的なイメージを持っていると考えられることから、あとはいかに実際の行動に結びつくかを検討すべきと考えられる。この群の人たちが、「建前」として肯定的な解答をしている可能性も考えられるが、さまざまな種類の回答に全体としてほぼ矛盾なく、整合的に答えていることから、この可能性はさほど危惧しなくてよいものと考えられる。

?具体的アプローチの方向

D群とE群の間で大きな差がみられたのは、当然のことかもしれないが、精神障害者との接触経験であった。D群については、既に精神障害者に対するイメージは好ましいものを持っていることを考えれば、ともかく接触機会を増やすことが重要であると考えられる。DE群が精神障害者に対する理解がすすんでいると言っても、問13のようなメッセージ(刑事事件の比率など)を「聞いたことがない」と答えた人は相当数おり、こうしたメッセージを積極的に伝えていくことも重要であろう。

なお、以上の考察は、ここで検討してきた5群に対して選択的に到達可能であるという前提であるが、実際にはそれは容易でないので、具体的なアプローチ法を検討するにあたっては、前記のアプリオリの方法と連動していくのが望ましいと考えられる。

 

 

 

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