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分解によって生成される木ガスや残査に発火条件が整うと発火となる。発火条件は主として与えられるエネルギー条件といえるが、生成ガスの場合には、これにガスの組成限界としての条件が加わり、一定の上、下限値の間にあることが必要条件となる。こうして発火した樹葉は、そこに燃焼条件が満足されれば、燃焼することに成る。燃焼条件は酸素の供給とエネルギーの供給であるが、一般に前者は十分と考えられる。従って、エネルギーが発火から引き続いて供給されるということが燃焼をする上で必要なことと成るわけである。こうして、発火、燃焼の両条件を満たしたものは、炎上してしまうわけで、防火上は無効と考える。

一方、燃焼することなく、樹木の形状が維持されたものについては、その背後への熱の浸透を防ぐ遮熱力が期待できる。この形状維持には、三つの場合が考えられる。第1は、熱を受けても熱収支のバランスが崩れず、その葉が熱分解するに至らない場合である。これはいわば定常状態に近いと云える。第2は、熱分解はしたが、発火の条件が整わず発火に至らない場合である。風によって葉が振れ、生成ガスを拡散し、所定の組成限界に至らないという例もある。しかし、一般には主としてエネルギー条件に左右されているものと思われる。最も耐火力の弱い針葉樹の場合でも、輻射熱12,000Kcal/m2h未満、温度400℃未満であるとエネルギーとしては不足で発火しない。この場合も、先の場合と葉の生理的性状は異なるが樹木としての形状は維持されることになる。第3は、発火はしたが、燃焼条件が整わず消えてしまう場合で、この現象を「立消」と言う。燃焼条件のうち、一般には酸素の供給は十分と考えられるから、エネルギーの供給が不足と云うことに成る。表層の葉が発火、燃焼しても、次層の葉はともに燃焼するだけのエネルギーとしての熱が及んでいないと云うことは、表層の葉によって、次層の葉が熱から遮蔽されていることであって、これは、樹木の熱制御機能(主として遮蔽)を示すものに外ならない。この立消えの場合、一般には樹葉の炎上範囲は小規模であるから樹木の形状としては不十分ながらも維持される。筆者の行った多くの実験では、樹冠の前面の1/3が一気に炎上したモッコク(H=4m,W=3m)が最も大きい例で、他は表層の一部の葉が炎上するに過ぎない。

このようにして熱に耐え、焼失することなく、樹木としての形状を維持してはじめて、遮熱力が云々される。遮熱力は樹木が壁となってその背後への熱を遮断する力であって、樹木が空間を遮る割合(空隙率)が問題となる。

空隙率は樹木の遮熱力を導く基となるもので、一本の樹木の立面積(樹木範囲=高さ*業張)の中に樹木の葉、枝幹によって遮られない空間が何割あるかということが基本となる。

即ち、空隙率={樹木範囲…(葉面積十枚幹面積)}/樹木範囲として表される。但し、この楽面積の中には多くの隙間があるのが常であり、また、この隙間は樹種により異なる。従って、葉面積には、樹種別の葉密度係数による補正が必要である。この空隙率の大小によって、防火上の有効性の評価が可能となる。

 

 

 

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