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この地区は、火が北から南に向かって流れたとされている所である。この家の北側は、芝生と空地で建物はない。芝生は緑色を保っており、地上を火が走った形跡はない。北側には燃えるものがなかったわけである。飛火については、屋根(瓦葺)、壁(モルタル塗)からみて、この家は比較的抵抗力があったはずである。更に、家の北面を覆っている一本の大木(California Live Oak/Qerucus agrifolia)が火の粉を防いだと思われる。この樹は土地在来のもので、火には強いと云われている。葉は緑色を残しており、熱気流の影響は余り受けていない。この家の前面のCochra Av.は、車道と歩道を合わせ15mほどの道路である。これに両側の住宅前庭の空地幅を加えると、この家の東側は約20m幅の空地帯ということになる。北から南に走った火は、この家の向かい側に連なる家屋を次々に灰にしていった。しかし、これら炎上家屋からの熱はこの空地により軽減され、この家を炎上させるまでには至らなかった。風が北風(この家に対し横向き)であったことも幸であった。

南の隣棟は焼失している。飛火によるものか、下の段からの延焼か、焼失家屋が既に片付けられてしまっていて不明なので定かではないが、下の段の家屋の焼け方からみて、下からの延焼とみてよかろう。

ここは我が国でいう背割区画であり当家は東側の区画で唯一焼け残った。西側は地形的に5mほど低くなっているが、家屋は全て焼失している。上の段(東側)はこの下(西側)からの延焼とみる。上の段にあるこの家が例外的に下からの延焼に耐えたのは、家屋の下に枝を広げたCalifornia Live Oakが熱を通ったことが大きな要因である。樹木は焼失家屋側は茶色に変色しているが、裏側であるこの家の側は緑色を保っており、炎上した下段の家屋からの延焼を防ぎ防火の役を果たした。筆者のこれまでの火災実験の体験から云えば、この樹木の規模(枝張り15m、高さ10mほど)であると、片側が炎上しても反面は葉の合水率にも殆ど変化はない。熱の影響が反対側には及ばないのである。

 

(4)焼止まり線について

スカイライン地区の焼け止まり線は、主として東の尾根上を走るBroadway Terrace Av.である。B.T.Av.は、焼失区域の南から東にかけて、曲りくねって尾根を登り、Skylineと結ばれている。焼け跡は、ここで明確な境を示していた。

坂を登ってきた火がその頂上で障害物にあうと、勢力が減衰する。ここでは樹木が障害物になった。斜面を登り、道路を越えようとした火の勢いも道沿いの樹木群によって阻止されている。片面をあぶられ、変色しながらも樹木としての形を残したため、その防火機能を発揮できたわけである。これが火災現場における典型的な緑の焼止まり線である。

この火災の焼止まり線のうち北と東は凡そこの形態であり、被災地中央から遠方の尾根を望むとき、焼止まりとなった緑の帯をはるかに確認することが出来る。

 

 

 

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