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と発展を保証する上で極めて重要である。また、国境は総合的国力の変化にともない戦略的国境線の範囲は変動するものであり、過去、ソ連やアメリカは軍事力を中核として、地理的国境をはるかに越えた勢力圏を拡大してきた。陸地、海洋、宇宙空間から深海に至るこれら3次元的空間は、安全空間、生存空間、科学技術空間、経済活動空間として中国の安全と、順調な発展を保証する戦略的国境の広がりを示すもので、国益はその拡張された勢力圏の前線まで拡大されており、戦略的には国境線の拡大を意味する」。

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現在、中国は陸上の国境線が確定しているため、チベットを支配下に置いているに過ぎないが、国境線が不明確な海洋については、1989年に中国海軍の海軍副司令員兼参謀長の張序三が、「世界には海洋に面した国家間の海洋権益、海洋秩序をめぐる支配と反支配、略奪と争奪反対の闘争がある」。これに対して海軍の任務は「国家の主権と海洋権益を守るものである」と、単に領土だけでなく海洋権益の防衛を大きく取り上げたが(19)、さらに1992年2月には「中華人民共和国領海・接続水域法」を定め、「中国大陸及び沿岸諸島、台湾及び魚釣島を含む付属島嶼、膨湖列島、東沙群島、西沙群島、南汰群島、その台湾の中国に属する島嶼が含まれる」と、一方的にこれら海域の領有及び船舶の通過に関する規定を宣言するなど(1996年5月の第8期全国人民代表会議では尖閣列島と南沙群島は外した)、中国は海洋資源へのあくなき獲得欲を見せている。ここで特に見落とせないのが、ベトナムが既に実効支配していた西沙群島や南沙群島への進攻を「自衛反撃作戦」、チベットへの進攻を「上層反動集団が反革命武装反乱を起こしたので、鎮圧した」と、「反乱平定作戦」と命名するなど、自己正義感を主張し軽々に武力を行使しする中国の体質である(20)。国境が不明確な海洋に関しては現在も外洋へのエナーシャーは強く、アメリカ海軍情報部は(21)、最近、近海防衛戦略の適用範囲を10倍も外方に拡大し、2500海里と発表している。

 

 

 

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