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1 国家の政治上の力は、その国家の領域の広さに依存する。

領域に関する概念が低下すると、その政治体は衰滅する。

2 国境は同化作用の境界線である。国境は国家の膨張力に応じて変動すべきものである。その膨張力が、これを阻止する境界線に出合うと、それを打破しようとして、ここに戦争が起こる。

3 国家は、生命を持つ組織体である。生物の成長のためには暴力を用いても阻害要因を排除しなければならない場合がある。

4 国家は生物組織体であり国境は流動性を持つ、すなわち国家は成長する生き物であり、必要なエネルギーを与え続けなければ衰弱し、やがて死滅するに至る。そこで国家は生命力に応じ、これを維持するための生存圏(Lebensrum)を確保しようとする。

5 地球上には大国を1つだけしか容れる余積がない。

そして、ラッツェルは国家が成長する条件を次のように展開した。

1 国家の領域は、文化の浸透とともに拡がる。

すなわち、国民が自国の文化を他国の領土内に拡大すると、その領域が自国の領域に加わってゆく。

2 国家は国民の拡張状況が顕示されるに伴って成長してゆく。

国旗は、経済、宗教、文化活動の拡張の後を追って拡がってゆく。

3 国家は、より小さな政治単位を併合または吸収して大きくなってゆく。

4 国境は国家の周辺組織である。国境は、その国内における力、成長および変化などを反映して変化する。

ラッツェルは、このように「成長する国家の膨張力は、暴力をもってでも阻害要因を排除し、国家はより小さな国家を併合または吸収して大きくなってゆく」。また「国境は、国家の膨張力に応じて変動すべきものであり、地球上には大国を一国しか容れる余積がない」と唱えた。そして、その生存圏理論が、植民地拡大政策を強行していたビスマルク(Otto E.L.F.von Bismarch 1815-1898)の政策の理論的根拠として利用された。次いで、この理論をさらに体系化したのが、スェーデンの地理学者ルドルフ・チェレン(Rudolf Kjellen 1864-1922)で、チェレンは1901年に出版した『レーベンスラウムとしての国家』という本で、初めて「地理と国家の関係」ということに地政学(Geopolitik)という言葉を導入し、次のように論じた(2)。

 

 

 

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