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5.関係水域の管轄権に関する主張

尖閣諸島を巡る紛争は、海洋資源の開発の観点から関係水域の境界画定問題と密接に関連している。

第一に、大陸棚に関して関係国の見解の相違が見られる。(※海洋法条約第76条1項及び5項)中国は自然延長論をとり、東海大陸棚に対して主権を主張している。台湾も同様である。韓国は、黄海において中間線原則、東シナ海において自然延長論をとっている。日本は原則200海里までとし、尖閣諸島を自国の大陸棚の範囲に含めようとしている。沖縄トラフの存在は問題をより複雑にしている。中国は、日中間の大陸棚は沖縄トラフによって分割されると考え、日本は、単なる地形上の窪みである沖縄トラフは境界画定に影響を与えないとしている。

第二に、島の地位についても関係国で考え方が違う。(※海洋法条約第121条2項及び3項)中国及び台湾は、尖閣諸島はそれ自体では大陸棚を持たないとの立場であるが、日本は、尖閣諸島を東シナ海における自国の大陸棚を測る基点と考えている。

第三に、境界画定の原則に関する立場の違いがある。(※海洋法条約第83条)

中国の立場は、境界画定は主として合意によるべきで、中間線原則は衡平原則の条件の下で適用される手段の一つに過ぎないというものである。韓国は、沖縄トラフの存在は中間線原則が適用されない特殊な状況を作り出しているとの立場をとっている。日本は、中間線原則が適切な境界画定の方法であると考えている。

海洋法条約では、中間線による境界画定は合意線がない場合に適用する手段として規定されており、日本のように中間線原則を固持し、沖縄トラフを無視することで広大な東海大陸棚の領有権を主張することには問題があろう。

 

6.解決のための選択肢

尖閣諸島を巡る紛争は1972年の日中国交正常化以来問題となってきた。この間問題を棚上げすることで大きな紛争を避けてきたが、右はあくまで取りあえずの措置に過ぎず、条件が整えば交渉による解決が必要とされる。

その条件は今や完全に整っていると言える。経済開発が主要な国家目標である関係国の海洋資源の開発及び東シナ海の石油に対する期待は高まり、また政治的な緊張緩和及び地域協力の発達は解決のための機会を十分に提示している。更に韓中間の外交関係回復、日中間の信頼関係増大等もあり、尖閣問題解決について話し合うための機は熟している。

具体的な解決の見通しには以下の三通りの選択があろう。

 

 

 

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