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海洋における法と秩序

太平洋での海賊行為、麻薬問題、不法入国への共同対処

 

スタンレー・ウィークス(米国SAIC)

 

背景

 

アジア太平洋地域の諸国家の間において、海洋における協力の必要性がますます認識されるようになってきた。この地域の海上防衛、信頼譲成措置、さらには海洋の資源・環境問題についてさえ、将来における協力のあり方をめぐって、活発な議論がなされ、さまざまな提言がなされてきた。

しかしながら、現在までのところ、「海洋における法と秩序」に関わる問題、特に海賊、麻薬、および不法入国に対処するうえでの、海洋における協力の可能性については、ほとんど、考察されてこなかったのである。

こうした問題は、一般的には(海軍よりも)むしろ国内の行政機関・法執行機関によって処理されるべきであり、また、そうした国際協力は二カ国間関係の中において、ますます緊密さの度合いを増してきているのだが、地域の海洋における協力の可能性ほどには、関心を呼び起こさなかったことは、ある意味では、おそらく意外なことではない。

本稿は、こうした問題の本質を分析し、それらが海洋における(国内の)安全保障に大きな影響を与え得るものであること、また、問題の解決に向けた地域の協力にとって意義があることを提示するものである。これらは、おそらく、地域ないしは区域での海洋における安全協定という広い範囲の範疇に属するだろう。

 

海賊

 

海賊行為は1982年の海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約・1994年11月発効)第101条において、??公海またはいずれの国の管轄権にも服さない場所にある?¢D舶(または航空機)に対して行われる不法な暴力行為、抑留{または略奪行為}と定義されている。

国際法のもとでは、いずれの国も、公海{またはいずれの国の管轄権にも服さない場所}において海賊を拿捕し、科するべき刑罰を決定することができる{国連海洋法条約第105条}。

国連海洋法条約第58条第2項によって、上記の規定は、海賊行為が国家の主権が及ぶ領域で発生した場合を除いて、領海外(例えば、排他的経済水域)においても適用される。(もちろん、このことは、「公海またはいずれの国の管轄権にも服さない場所」に言及している国連海洋法条約の海賊行為の限定的な定義によって提起されている)

また、国連海洋法条約では、群島水域(群島の最も外側の島{及び常に水面上にある礁の最も外側の線}を結ぶ直線、すなわち群島基線の内側の海域)についても規定されている。

この群島水域には群島国家の主権が及ぶのであり、それゆえ、公海における海賊行為の定義や規定の適用を受けないのである。

 

 

 

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