日本財団 図書館


第二部 国と地方の税源配分のあり方に関する調査研究

 

分権時代の税源配分

神野直彦(東京大学教授)

 

一 「地方分権」の時代

 

1980年代を契機とする20世紀末は、世界的に集権型社会から分権型社会への転換を目指すというエピソードで彩られた「地方分権」の時代となっている。それはこの20世紀末に生じている経済社会の総体的構造変化が、国民国家の黄昏という現象をともない、地方政府の飛躍的機能拡充を要請しているからにほかならない。

こうした地方政府機能の断続的ともいうべき飛躍的領域拡大にともない、これまでの集権型社会を支えてきた国税と地方税との税源配分も、根底から問い直されることになる。そこでここでは20世紀末に胎動し始めた地方政府機能拡充の動きを考察しながら、歴史的コンテキストと理論的コンテキストという複眼的視点から、「地方分権時代」にふさわしい税源配分論を展望してみたい。

 

二 税源配分論の歴史的潮流

 

1 税源配分調整方式

これまで歴史的に語り継がれてきた税源配分論をみると、二つの前提を共有していたと指摘することができる。その一つは、地方政府がボーダつまり境界を管理しないオープン・システムの政府であるということである。もう一つは、国税と地方税の税源配分論でいう地方税とは、もっぱら独立税を意味するということである。

ところが、後者に関していえば、地方税の形態としては独立税だけでなく、諸種の形態が考えられる。「地方分権時代」には地方税の課税形態を視野に取り込みながら、地方税の税源配分論を展開すべきではないかということが、本稿の重要な主張の一つとなる。

地方税の形態は第1図に示したように、課税権と税収とが、国税と分離している「税収分離方式」と、分離していない「税収分配方式」の大きく二つに分類することができる。税収分離方式はさらに、独立税のように国税と地方税とを分離して課税する独立方式と、付加税のように国税と重複して課税する重複方式とに分かれる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION