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また、平成9年8月には市民・事業者の積極的な行動実施を求めるためにも、本市自らが率先して行動計画を定め、実行することが必要であるとの認識のもとに「なごやアジェンダ21」推進協議会とも連携を図りながら、「名古屋市庁内環境保全率先行動計画」を制定し、公表した。この庁内率先行動計画は計画期間を原則平成12年度までとし、具体的な数値目標を掲げ、行動目標及び行動メニューを示している。(図3)

例えば、低公害車の導入では、「公用車への低公害車の導入については、平成17年度において保有する公用車のうち、通常の行政事務の用に供するものに占める低公害車の割合を概ね20%に、その他の用に供するものについては概ね10%へ高めることを目標に、その条件整備を図りつつ、率先的、計画的な導入に努める。」としている。

この行動計画の推進を図るため、各局区室の庶務担当課長を率先行動主任に当て、各組織の実情に適した実践計画を作成し、その推進を図ることとしている。

また、率先行動主任の連絡調整を図るため、環境保全率先行動主任会議を設置するとともに、環境研修を計画的に実施している。

(2)二酸化炭素の10%削減をめざして

1955年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第2次報告では温室効果ガス(二酸化炭素、メタンガスなど)の排出による大気中の温度の上昇により、地球温暖化がすでに起こりつつあり、21世紀末には地球全体の平均気温が約2℃上昇し、海面水位が約50cm上昇することを警告していることはすでによく知られている。

二酸化炭素の濃度と温暖化との科学的因果関係については異論もあろうが、二酸化炭素削減の大きなうねりが人々の環境に対する認識を変え、ライフスタイルの転換に結びつけば大いに意義のあることといえよう。

平成9年は、「気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)」が京都において開催され、地球温暖化に対する2000年以降の取り組みの方向性が決定されるという、21世紀の地球環境のあり方を左右する大きな節目の年に当たっていた。

本市は、この京都会議に先立ち、第4回「気候変動に関する自治体リーダーサミット」を開催した。この会議は世界52ケ国の約270の自治体が加盟する国際環境自治体協議会(ICLEI)が中心となり、地元の愛知県、名古屋市と共同で開催したもので、ニューヨーク、ベルリン、埼玉に次いで今回は4回目となる。

この会議には世界29ケ国、145自治体の代表が出席し、温室効果ガス排出量の削減と大気保全に関して自治体が取り得る効果的な手法などが熱心に討議され、最後に世界各国の自治体における地球温暖化対策を推進するための「名古屋宣言」を採択して幕を閉じた。

宣言の中で、先進国に対し、2010年までに1990年比20%の二酸化炭素削減目標を設定することをうたっている。本市としては、開催市でもあり、地球環境問題に対する本市の姿勢を示す意味からも、市内から排出される二酸化炭素の排出量を2010年までに1990年レベルから10%削減する数値目標を、これをきっかけに打ち出した。

本市の二酸化炭素の年間排出量は1990年水準で炭素換算で367万トンで、現状のまま対策をとらなければ2010年には17%増加し、約430万トンになると試算されている。これを約330万トンまで削減しようという目標である。現段階(平成10年1月)では、事業者・市民が車や電気の使用量を約10%削減すれば、排出量は2.3%削減可能で、残りの7.7%は国頼みという「努力目標」であり、具体的な積算根拠を示したものではない。

確かに、二酸化炭素の10%削減は容易なことではない。それは、すでに述べたように行政だけの努力ではいかんともしようのないものだからである。市内から排出される二酸化炭素の部門別比をみても、約33%が民生部門であり、市民一人ひとりの自覚と行動なくしては達成できるものではない。(図4)しかも、本市の場合は他の大都市と異なり、自動車の利用が圧倒的に高い。(図5)

平成3年度のパーソントリップ調査に基づく「中京都市圏の人の動き」によれば、名古屋市を中心とした中京都市圏の交通手段(徒歩含む)における自動車の依存割合は約5割となっており、また、市内の自動車保有台数も過去10年間で約3割増加している。このように本市においては民生部門における市民協力と並んで、自動車対策、例えば、TDMのような手法の効果的な実践が必要となろう。

あえて無謀ともみえる具体的数値目標を掲げ、背水の陣で望む決断をした理由としては、これまでのような「行政のひとり相撲」をやめて、これからは市民と共に行政と市民のパートナーシップでもって問題を解決していこう、

 

 

 

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